チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで

「チューリヒ美術館展
印象派からシュルレアリスムまで」

会場:神戸市立博物館
会期:2015年1月31日~5月10日

そもそもチューリヒ美術館とはどこの美術館なのでしょうか。
正解はスイスのチューリヒにあります。
スイス芸術家の有名作品のほか、後期ゴシックやイタリア・バロックの名作、オランダ絵画、フランドル絵画から、フランス印象派絵画、表現主義絵画まで、各時代を代表するような巨匠の名画がそろっています。またそれと別に15世紀から現在までの素描や版画を集めた約8万点のグラフィック・コレクションや、写真やビデオ作品もあり、バラエティに富んだ作品を所蔵しています。

パンフレットに「巨匠いっき見!!」と書いているのですが、まさに有名芸術家を本展示で一通り見る事ができます。

作家数と作品数が多いので気に入ったものだけ紹介します。

1)ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858~1899)
幼いころ、母が病死し、父に捨てられ、異母姉の冷遇の元で暮らしますが、天然痘にかかるなど、幼いころから非常に不幸な生活をしています。彼はイタリア出身ですが、結婚後、スイスに移住します。
印象派の技法を取り入れつつ、彼独自の方法で雄大なアルプスを描くなどほかの印象派とは少し違うタッチで描きます。

淫蕩な女たちへの懲罰

淫蕩な女たちへの懲罰

虚栄

虚栄

幼少期の不幸の連続、母親の不在が絵画に影響を与えているのがよくわかります。
母を題材にした作品、おどろおどろしい雰囲気をたたえた作品が数多く残されています。

スイスにはセガンティーニ美術館があり、スイスではかなりメジャーな存在のようです。

過去に大原美術館や静岡市美術館でセガンティーニ展を開催していたようですが、邦題が毎回違うのでご注意を。

2)オーギュスト・ロダン(1865~1925)
彫刻は今まで全く興味なかったのですが、この作品は全然違いました。作品の持っているパワーに圧倒されてしまいました。
著名人はオーラを感じるといいますが、まさにその感じです。
と、感動して調べてみるとなんとあの「考える人」の作者だったのですね。
まさか国民的認知度の高い作品の制作者だったとは。

考える人

考える人

ロダンは労働階級の家庭に生まれます。ロザンは遅咲きで生活の金銭を稼ぐのに精一杯でなかなか作品の制作ができませんでした。しかし、イタリア旅行でミケランジェロの彫刻を見てその情熱が再度燃え上がります。
その後制作した「青銅の時代」という作品が審査員の目に留まり、一気に知名度を上げます。晩年まで制作を続けていました。

殉教の女

殉教の女

静岡県立美術館にはオーギュスト・ロダン館があるので行ってみたいですね。
なぜ日本にそんなものがあるのだろうと思っていたら意外な点で日本と接点がありました。ロダンは第一次世界大戦前後までヨーロッパで活躍した女優、花子(本名は太田ひさ)をモデルにした彫刻を数多く制作しました。一人をモデルにした作品はこの方が最多です。東洋人の顔が珍しかったのかもしれませんね。

3)フェリックス・ヴァロットン
スイス出身のナビ派の画家。実験的要素の強い構図、展開をシュルレアリスムを予感させました。また、木版画はグラフィックアート界に新たな可能性を示しました。後世に影響を与えた人物です。

訪問

訪問

4)エドヴァルト・ムンク(1863~1944)
「叫び」で有名のムンク。幼少期から青年になった後も家族の死に直面しその不安、悲しみ、嘆きが作品にも表れています。自身もアルコール依存症を治すために精神病院に入院したことがあります。生まれ育ったノルウェーでは作品発表当初は酷評され続けます。しかし、30歳を過ぎてからベルリンやパリなどで評判を上げ、1908年にはノルウェー王国政府から聖オラヴ騎士章を授けられました。

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士はチューリヒ美術館の初代館長です。なかなかの男前ですね。

ちなみに他にはホドラー(同時期に兵庫県立美術館でホドラー展を開催しています。)、モネ、ドガ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルソー、ココシュカ、マティス、ブラック、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアン、ジャコメッティ、クレー、キリコ、ミロ、ダリ、マグリットなどが大御所たちが展示されています。

作品とは全然関係ないのですが、展示方法がいまいち・・・と感じました。作品はカテゴリーごとにセクションが分かれて展示されており、そのカテゴリーの解説もきちんとあるのですが、そのカテゴライズの仕方が気に入りません。
「ポスト印象派」「表現主義」「ムンク」「ココシュカ」など「○○派」と「人物名」を同カテゴリーでくくっているのです。
これでは各カテゴリーで完結してしまっていて、各セクションのつながりがなく非常に困惑してしまいます。

新印象派展を見に行ったときは、初めて新印象派を見る人にもわかりやすく時系列ごとに展示していた上に、印象派と新印象派の違いなど丁寧に解説していました。新印象派には期待せずに見に行ったのですが、すっかり好きになりました。

今回の展示も、個々で見ると非常に興味のそそられる作品ばかりです。しかし、ディレクションが上手くいっていないために、どの作品も印象が薄くなっているように感じます。作品自体が素晴らしいものばかりなので、何もしなくても集客できると絵の力に甘えているようにも取れました。

せっかく立地もいいですし、由緒ある建物で展示しているのでもうちょっと頑張ってほしいです。

◆参考◆
スイス政府観光局(チューリヒ美術館の紹介)
静岡県立美術館オーギュスト・ロダン館
フェリックス・ヴァロットン

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