山本二三展 リターンズ-天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女-

山本二三展 リターンズ
-天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女-

会場:神戸ゆかりの美術館
会期:2016年7月16日~2016年9月4日

ルパン三世、天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫ー
日本人なら一度は見たことがあるこれらの作品を影から支えた美術家、山本二三(にぞう)の展覧会に行ってきました。

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山本二三氏(神戸ゆかりの美術館HPより)

この方、経歴が面白く、もともとは建築関係の勉強をされていました。ですが、どういうきっかけかはわからないのですが、未来少年コナンで美術監督に抜擢。若干24歳だったそうです。お若くて成功した方ですね。

普段、アニメーションとして動画で見ているので、なかなか一つのシーンを静止画としてみることができないので、非常に興味深かったです。
特に初期の天空の城ラピュタなどは今のようにパソコンで描くのではなく、手書きなので細部の美しさが光ります。遠くからみれば本当に写真のように見え、とくにもののけ姫の背景画はまるで実際にある風景の中にいるように錯覚しました。

会場内ではアニメーションの用語などをわかりやすく解説しています。普段何気なくアニメを見ているので、本当に「へえー!」と唸るものばかりでした。

所狭しと飾られた作品以外にも、天井からぶら下がる大きな布のようなものにプリントされた作品、受付前にある記念撮影用のセットなど狭い空間を生かして様々な手法で作品を見せていました。

色々な年代の方が来られていたので、じゃりん子チエや未来少年コナンなどの背景画もあったので、世代の方は懐かしくなるのでしょうね。
なんだかもう一度ジブリ作品を見たくなりました。

◆参考◆
神戸ゆかりの美術館

 

時と風景─未来をつなぐコレクション

「時と風景─未来をつなぐコレクション」

会場:滋賀県立近代美術館
会期:2016年4月23日~2016年6月26日

さて、先日初めて滋賀県立近代美術館に行ってきました。
ここの美術館は「文化ゾーン」という図書館や公園、運動場がある大きい公園の中にあります。
緑が多く自然と寄り添うように作られた低い天井の建物は、主張せずひっそりと佇んでいます。

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外観

タイトルからわかるように、本展はこの美術館のコレクション(美術館が持っている作品)を駆使して展示されています。
この美術館、なかなかいいものをたくさん持っています。

時に対するアプローチを4つの章に分け、それぞれを軸として様々な風景を描く作品を紹介します。
4つの章はそれぞれ要約すると「出来事の記録」「都市と自然」「過去からのメッセージを現代へと昇華させたもの」「循環する時と生命のサイクル」から成り立っています。
最初の2章が、風景、最後の2章が時に焦点を当てています。
それぞれテーマが難解なだけに、章の中ではそれぞれ綺麗にまとまっているのですが、各章ごとのつながりが少し薄いように感じました。

展示作品の中で、とても気に入ったものはなかったのですが、
有名なアーティストの作品を見れたのはうれしかったです。
例えば、
ポップアートの先駆者、
ロイ・リキテンシュタイン

この作品が一番有名ですかね?
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「泣く女」

このドットの部分は全て手書きで、より不思議さを感じます。
残念ながら、展示していた「積みわら」シリーズは画像が見つけられなかったです。
他にも河原温、ロバート・ラウシェンバーグ、クリスト、シンディ・シャーマンなど。

また、撮影禁止だったので写真がないのですが、各章の初めにある展示ガイド(キャプション)の枠ぶちがすべてこのフライヤーの枠ぶちと同じでした。青色で、「時と風景」と四隅に書いてある部分。
展示全体に一体感を感じ、このような手法もあるのだと感心したものです。

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気になったことは、もしかしたら地方の美術館の特徴なのかもしれませんが、
展示技法やレイアウトが古典的だと感じたことです。
予算がない、上司の好み、、、なの色々理由があるのでしょうが。

◆参考◆
滋賀県立近代美術館

デトロイト美術館展 大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

 

大阪市立美術館 開館80周年記念
デトロイト美術館展
大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

会場:大阪市立美術館
会期:2016年7月9日~9月25日

アメリカ・デトロイトにある美術館の作品が大阪に巡回してきました。
デトロイトといえば、車産業が盛んな市であり、また、2013年に財政破綻したことで有名な市です。

大阪もデトロイト市と同様に、財政難で大阪現代美術館など文化施設を閉鎖しました。その中で大阪市立美術館はデトロイト市と同様に、財政難から逃れ、生き残った美術館でもあります。(スケールは違いますが・・・)それに引っ掛け、館内では各々の美術館の共通点をビデオにして放映していました。

本展は豊田市美術館にも巡回していますので、豊田市ではゼネラルモーターズとTOYOTAを引っ掛けて映像を作っているのでしょうね。

まず、デトロイト市は元々、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ、クライスター(通称:ビック3)の工場が立ち並び、産業で発達した都市でした。

しかし、1960年代のデトロイト暴動、1970年代の日本車の台頭により、デトロイト市の産業は廃退の一途を辿ります。経営悪化による従業員のリストラ、人口流出により不況に陥ります。デトロイト市は数々の打開策を打ち出しますが、それも叶わず、2009年のゼネラルモーターズ、クライスターの経営破綻が重なります。他業種の研究機関を置くなど、デトロイト市はなんとか頑張るのですが、ついに2013年に財政破綻に陥ります。

デトロイト美術館には数々の貴重な作品を保有しています。市はそれをオークションにかけ、売ることでお金を得ることを希望します。しかし、美術館が持つ美術品は市の税金で購入された財産です。手放してお金を得ることは簡単ですが、それは安易な考えです。(ヨーロッパでは財政難になると作品を得ってお金を得ることが一般的のようです。)市民や美術団体の反対により、作品は売却の手を免れ美術館も解体されずに守られることになりました。

大阪でいいますと、大阪現代美術館はなくなりましたが、美術品は各地の文化施設に保管され、江之子島文化芸術センターでは定期的に展示を行っています。大阪市民が猛反対すれば、現代美術館もなくならずに済んだのですかね。海外と日本の美術に対する温度差を感じます。

これらの話は館内で放映されているビデオや、原田マハなど著名人による音声ガイドでも聴けます。

音声ガイドは有料です。

私は海外では英語以外はキャプションが読めないので、音声ガイドを聞きますが(ほとんどの美術館は音声ガイドが無料です)、日本では音声ガイドは聞かない派なので(有料ですし(笑))、どういう内容かは不明です。

前置きはこのくらいで本展では4つのセクションに分けて作品を紹介します。

気になった作品を紹介していきます。

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エドガー・ドガ(1834-1917)「楽屋の踊り子たち」

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クロード・モネ(1840-1926)「グラジオラス」

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アメデオ・モディアーニ(1884-1920)「女の肖像」

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ラウル・デュフィ(1877-1953)「静物」

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ファン・グリス(1887-1927)「静物」
スペイン生まれ、パリで活躍したキュビズム画家です。モダンですね。

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エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー(1880-1938)「月下の冬景色」
今回のお気に入りです。
不眠症に悩まされながらアトリエの窓から目にする風景を描いた作品です。恐らく不眠症が原因でしょうが、作家には外の風景がこのように見えて、感激されたそうです。その感激された風景を絵に収めた作品です。
不思議な色合いの中に潜める冬景色の荘厳さと作家の静かな感動が一体となって、少しずつその感覚が迫ってくるようでした。

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フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)「自画像」
本展の一番の目玉です。

本展は週末を除き、写真撮影がOKでした。デトロイト美術館では写真撮影が許可されているため、日本でも同じように写真撮影を許可しているそうです。

この他にもオスカーココシュカの「エルサレムの眺め」が良かったのですが、SNS掲載がNGのため、展示されていたことだけお伝えします。

「○○美術館展」とつくものの多くは、狭い展示室に所狭しと展示されている場合が多いのですが、本展は52点展示で少し少なめなので、逆に見やすくて良かったです。

さすが写真大好きな日本人、皆様パシャパシャと作品をカメラに収めている姿が面白かったです。海外の有名な作品が来ている時の特徴だと思いますが、来場者は老若男女、子供まで数々の方が来場していました。量もそれほど多くないので、皆様退屈せず、しんどくもならず、ちょうどいい塩梅だと思います。入場料はちょっと高いな、と思いますが。○○美術館展とつく展示はどこも1,500~1,800円が多いですね。

監視員も厳しすぎるくらいきっちり監視されており、好印象でした。常設展が開催されていなかったので、同じチケットで常設展も見れるようにすればいいのにと思います。

子供向けの鑑賞ノートも置いてありました。お絵描きできるようになっていて、親子で奥の図書館で必死に書いています。

表紙には美術館でのマナーも書いてあります。

ところで予算のない昨今、どうやってこんな名画たちを持ってこれたのかなと不思議に思っていたら、外務省や大阪府、サンケイスポーツなど名だたる企業から後援、アメリカ合衆国大使館からの助成など、いろいろなところからご支援いただいていたからなのですね。
それでもギリギリの予算でされていたのかなと思うと、並ぶくらいお客さんが入ることを願うばかりです。

◆参考◆
デトロイト美術館展オフィシャルサイト
大阪市立美術館

PALAIS DE TOKYO

PALAIS DE TOKYO(パレドトーキョー)

Information
フランス・パリにある現代アート美術館。

入場料 :10€
8€(26歳未満・パスポートなどの証明証の提示必要)
Free(18歳未満?)
営業時間:12:00-0:00
休館日 :1月1日など(年によって変わる可能性があるので、ホームページにて確認してください。)
アクセス:13 Avenue du Président Wilson, 75116 Paris
(メトロ9号線lena駅すぐ)
HP    :http://www.palaisdetokyo.com(仏語・英語のみ)

6月下旬から7月中旬にかけてフランス旅行に行ってきました。
友人が何人かパリとナントに住んでいるので、会いに行くがてら、いろいろ美術館にいってきました。
ということで、行ってきた美術館の紹介。
まずは一番行きたかったパレドトーキョー!

日本の美術館と違い、とてつもなく広く、たくさん展示室があるため、複数のアーティストが同時に展示を行っています。
しかも、展示入れ替え期間がないからか、営業中も常に工事しており、(次の展示の設営と思われる)場所によっては、工事の音がうるさいのですが、不思議と気にならないのです。鉄筋コンクリ打ちっ放しのようなイメージの内部が違和感をなくさせるのか、それとも他にも大音量で音が流れる展示があるからか、はたまたパリだから仕方ない、と思ってしまうせいか。
(注:パリはかなり適当です!)

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こんな感じで営業中に工事してます。

そして、さすが現代アートの美術館!夜中まで営業しています。
入り口は違いますが、パレドトーキョーにはYOYOというクラブも併設されているので、
体力ある方はお昼は教会めぐり、夜は美術館、そのままクラブへいくのがおすすめ。
有効的に時間が使える美術館です。

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YOYO

ちなみによくパリコレクションなどのファッションショーの会場にもなります。

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ちょうどオートクチュールファッションウィークの時で、外から覗き見できました。
運がよければ、有名なブランドでなければ、招待状なしでも入れるようです。
写真はショーが終わって、カメラマン達がモデルを撮ろうと集まっているところ。

次回はパレドトーキョーでの展示を紹介します!

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写楽と豊国―江戸の美と装い

「写楽と豊国―江戸の美と装い」

会期:2016年6月18日~8月14日
会場:神戸ファッション美術館

忙しくて気がつけば1年以上更新していませんでした。時は恐ろしいものです。かなり書きたい記事がたまっているので、忙しいを理由にせず頑張って更新していきます!

神戸ファッション美術館はファッションに特化した美術館ではありますが、それ以外にも様々なジャンルの展示を行っています。
それがこちら。

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浮世絵です。
東洲斎写楽や歌川派など約140点もの浮世絵が所狭しと並んでいます。
*撮影禁止のため、写真はありません。

なんでも全てお一人の方の所蔵品らしく(そんなに持っているなんてうらやましい限り)、
保存状態がよくないものも多数ありますが、それでも滅多に見れるものではありませんから
見る価値ありかなと思います。

写楽だけではなく、葛飾北斎、歌川派など様々な絵師が、展示されており、また、アーティストごとや「美人画」「役者絵」などの用語もキャプションで解説しているため、お勉強にもなります。
また、人物の浮世絵のみなので、絵師によって違いがわかって面白いです。

せっかくなので用語について調べてみました。
1)浮世絵
現在の風俗を表した木版画、または肉筆画。
木版画は、絵師以外にも様々な人が制作に関わっており、大量生産できる。例えば、原画を描くのは絵師、彫るのは別のもの、色を入れるのも別のもの・・・など。
一方、肉筆画は一点ものであり、最初から最後まで一人の絵師が携わる。

2)役者絵
歌舞伎関係のものを描いた浮世絵。歌舞伎役者はもちろん、小道具や舞台、歌舞伎を楽しむ人々も役者絵に含みます。当初は、有名人ばかり描かれており、役者のブロマイドのようなものでした。
「写楽」ときいて一番初めに思い出すあの絵も役者絵です。

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東洲斎写楽 三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛

3)美人画
町娘や遊女など美しい女性を描いたもの。ヌードは含まれません。美人画は浮世絵だけを指すのではなく、日本画・洋画も対象となります。モデルの多くは当時の流行ファッションに身を包んでいたので、ファッション誌的な役割もあったようです。

最後に私が好きだった、歌川豊国の今やう娘七小町シリーズを紹介します。
全部で7点あるそうですが、そのうち2点は神戸市立博物館で現在開催中の展示
ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞
でご覧になれるようです。

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歌川豊国 今やう娘七小町・清水小まち

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歌川豊国 今やう娘七小町・雨こひ小まち

きれいですね!

余談ですが、
1)いくつかある展示室の最後が常設展(ファッションの展示)になっているのですが、一歩右に曲がれば、すぐに展示がお目見えするので、浮世絵とのギャップに違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
個人的には、浮世絵はこれでもか!と並べ立てていたので、
常設展コーナーはなしにして、その部分も浮世絵の方が見やすく、統一されていて良かったのではないかと思います。絶対、常設展が必要だったのかしら・・・。
2)受付付近に顔ハメコーナーがあります。
美人画・お相撲さん・役者絵の3種類ができちゃいます。

◆参考◆
Museum Of Fine Arts Boston
(ボストン美術館のコレクション検索ができます。)
日本文化いろは辞典

PARASOPHIA 京都国際現代芸術祭2015 その2~京都芸術センター編~

PARASOPHIA
京都国際現代芸術祭2015
その2~京都芸術センター編~

会場:京都市美術館、京都文化博物館 別館、鴨川デルタ、堀川団地(上長者町棟)、京都芸術センター、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店ショーウィンドー
会期:2015年3月7日~5月10日

京都市が運営しているアートフェスティバル。
京都芸術センターという元小学校を利用した芸術施設での展示を見てきました。
こちらの会場も無料で、展示作品は一つです。

アーノウト・ミック「異音」

アーノウト・ミック_3

アーノウト・ミック_1

アーノウト・ミック_2

ビデオインスタレーション作品です。

映像を複数のスクリーンに投影し、それを鑑賞するというもの。
この映像がとある大企業の社内行事の様子(本物の社内行事ではなく、俳優たちが演じています。)
を流しているのですが、だんだんそれが宗教の集会に変容していく様を流しています。

確かに私も就職活動時にたくさんの企業説明会に参加しましたが、
もはや企業とはひとつの宗教だと感じることが多々あり(実際に友人も同様のことを言っていたので、
少なからずそう感じる人はいるようです。)、まさに思っていたことを形にしてくれたような作品でした。

「日本」という国家もひとつの宗教みたいなものなのかもしれませんね。

この映像作品、音が一切ありません。無音です。
不思議なのは無音にも関わらず、私には声が聞こえるんですね。
映像の中の人が拍手をすると、私は拍手の音を聞いた気がしますし、
大声で歓声をあげている人を見ると、本当に私には歓声が聞こえる気がします。
しかも、私や観客の靴音や話し声よりもリアルに声が沸き起こってくるのです。
視覚でみた映像を脳が過去の経験をもとに声を再現しているのでしょうね。
日常の情報を脳がインプットするのは視覚が8割といいますが、
まさにこのことなのですね。

音のない視覚で認知した映像をもとに脳が呼び起こした記憶、経験の声と実際の靴音では、
はるかに脳が呼び起こした記憶の方がリアルだったのは、
文章では表せない物凄い体験でした。

個人的には映像そのものよりも、映像が引き起こしたこの体験の方が面白かったです。
ぜひ体験していただきたいです。無料ですしね。

アーノウト・ミック(Aernout Mik)(1962-)
オランダ生まれでアムステルダムを拠点に活動する芸術家。主にビデオインスタレーションがメイン。
過去に横浜トリエンナーレ、あいちトリエンナーレにも出展しています。
ただ映像を見せるだけではなく、観客が一体となって見れるような空間作りをしているので、
映像作家ではなく、ビデオインスタレーション作家のようです。

ちなみに河原町塩小路周辺の展示も見に行こうとしたのですが、
会場が見つけられませんでした。一体どこにあったんでしょう・・・。

◆参考◆
アーノウト・ミックインタビュー(本文では特に記述してませんが、
面白かったのでご紹介)
PARASOPHIA

PARASOPHIA 京都国際現代芸術祭2015 その1~堀川団地編~

「PARASOPHIA
京都国際現代芸術祭2015」

会場:京都市美術館、京都文化博物館 別館、鴨川デルタ、堀川団地(上長者町棟)、京都芸術センター、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店ショーウィンドー
会期:2015年3月7日~5月10日

京都市が運営しているアートフェスティバル。
主に現代美術を専門に展示していて、ジャンルもインスタレーション、写真、映像など様々です。
日本の古い美術がある京都で現代美術を展示しているのは非常に面白いですね。

会場は無料のものと有料のものがあります。
今回は無料の会場、「堀川団地」の展示を見てきたのでご紹介します。

ちなみに堀川団地は関西では知る人は知っている有名な団地で
団地R不動産にも紹介されたり、堀川団地での新しい取り組みについてご紹介するトークショーなども開催されるほどの場所です。
気になった方は◆参考◆で紹介しているHPをチェックしてみてください。

さて本題ですが、この会場の出展作品は3点。
2つは団地を利用した展示、もう一つはインスタレーション(パフォーマンスアート)です。

1)笹本晃(ささもと あき)(1980年~)
ニューヨークを拠点に活動されている芸術家。
今回は撮影されたパフォーマンスの映像を会場の壁に投影しており、
映像作品かと思ったのですが、会場にはパフォーマンスで使用したバケツを置くなどしており、
位置づけはインスタレーションとなっているようです。

会期中は主に週末に申込んだ方だけ、実際のパフォーマンスを見れるようです。

2)ブラント・ジュンソー(Brandt Junceau)(1959-)

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アメリカ出身でベルリンとニューヨークに拠点を置き、活動する彫刻家。
団地なので部屋の作りがふすまを隔てて二部屋あるのですが、
そのふすまを取ってしまい、二つの部屋の両極に人の顔をかたどったような彫刻が向かい合って展示していました。
あまり好みではなかったです・・・。

3)ピピロッティ・リスト(Pipilotti Rist)(1962-)
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団地の二部屋の間にあるふすまをこちらも外して両方の部屋に展示しています。
ムービーの赤色の方が、部屋の中央に布団が敷いてあり、その上に投影しています。
まるで夢を見ているようです。
反対側の部屋では天井に青色で宇宙(おそらく)の映像をながしており、観客の皆様は畳の上に座って
上を眺めながら鑑賞しています。
場所をうまく利用した素晴らしい作品です。
映像を見ていると夢を見ながら胎児に帰っていくような気持ちになります。

彼女はスイス出身のビデオアーティストです。
「女性らしさ」を扱った作品が多いです。
今回もそうですが豊かな色彩の作品が多く、より現実に近づこうとする作品を制作しています。
◆参考◆
堀川団地公式サイト
団地R不動産
PARASOPHIA
ウィキペディア

白川美術野外展

「白川美術野外展」

会場:京都市岡崎~知恩院を流れる川の中
会期:2015年3月8日~22日

偶然京都の近代美術館近くを歩いているとおもしろい展示を発見しました。
白川という川が京都市にあるのですが、
なんとその川の中に作品を展示しているのです。

白川野外美術展

主催は京都市彫刻家協会という団体。

白川は知恩院や平安神宮(近代美術館はその隣にあります)の近くにあり、
小さな小川で川辺を家族連れから観光客まで様々な人が通る閑静な場所です。

急いでいたのでじっくり見れなかったのですが、
こうやっていろんな人に開かれた展示をされているのは
素晴らしい試みだと感銘しました。

作品とは直接関係ないのですが、
川なので水鳥が遊びに来ているのですが、
鳥が寄ってくる作品と全く寄り付かない作品とがありました。
やはり色が派手で見た目がちょっと怖いものには寄ってきていないようです。

自然の中に展示するので、そういうところまで考えて作品を作るのも面白いでしょうね。

◆参考◆
京都市彫刻家協会

横浜トリエンナーレ2014その3

横浜トリエンナーレ2014
会場:2014年8月1日~11月3日
会期:横浜美術館、新港ピア

第二章
釜ヶ崎芸術大学

それは、わしが飯を食うことより大事か?

それは、わしが飯を食うことより大事か?

釜ヶ崎とは大阪あいりん地区の別称です。
あいりん地区はいまだに日雇い労働者の多いちょっと不穏な地域です。
関西では釜ヶ崎という名称よりも「あいりん地区」や「西成」の方が名前としては有名ですね。
住んでいる方には申し訳ないですが、女性一人である国は昼間でも少し怖いイメージがあります。

そんな場所に釜ヶ崎芸術大学というNPO団体主催の大学があります。
主な勉強内容は
書道、音楽、天文学、詩、美術、お笑い、合唱、狂言、ダンス、写真・・・など多岐にわたるようです。
横浜トリエンナーレキュレーターの森村氏も関わっています。

今回は大学に在学している方たちの発表の場だったようです。
複数人の、もしかすると在学している方全員の作品が展示されていました。
作品は正直言って好みではなかったのですが、
西成に芸術大学を作ったという試みは非常に興味深いと思いました。

芸術というと、生活する上で不要なもの、お金のある方がするものというイメージがあります。
生きるための生活費を稼ぐために必死の方が数多く住んでいる西成で、この「お金持ち」のものを学ぶ学校を作る。
きっと皆さん最初は「何でこんなもんいかなあかんねん」って思ったでしょうね。
でも作品を見ていると、小学生の時に、図工の時間が待ち遠しくてわくわくした気持ちのような、そんな楽しい気持ちが伝わりました。

釜ヶ崎芸術大学ができる前とできた後で参加者の心にどのような変化が起こったか、調査していただきたいですね。

◆参考◆
釜ヶ崎芸術大学

チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで

「チューリヒ美術館展
印象派からシュルレアリスムまで」

会場:神戸市立博物館
会期:2015年1月31日~5月10日

そもそもチューリヒ美術館とはどこの美術館なのでしょうか。
正解はスイスのチューリヒにあります。
スイス芸術家の有名作品のほか、後期ゴシックやイタリア・バロックの名作、オランダ絵画、フランドル絵画から、フランス印象派絵画、表現主義絵画まで、各時代を代表するような巨匠の名画がそろっています。またそれと別に15世紀から現在までの素描や版画を集めた約8万点のグラフィック・コレクションや、写真やビデオ作品もあり、バラエティに富んだ作品を所蔵しています。

パンフレットに「巨匠いっき見!!」と書いているのですが、まさに有名芸術家を本展示で一通り見る事ができます。

作家数と作品数が多いので気に入ったものだけ紹介します。

1)ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858~1899)
幼いころ、母が病死し、父に捨てられ、異母姉の冷遇の元で暮らしますが、天然痘にかかるなど、幼いころから非常に不幸な生活をしています。彼はイタリア出身ですが、結婚後、スイスに移住します。
印象派の技法を取り入れつつ、彼独自の方法で雄大なアルプスを描くなどほかの印象派とは少し違うタッチで描きます。

淫蕩な女たちへの懲罰

淫蕩な女たちへの懲罰

虚栄

虚栄

幼少期の不幸の連続、母親の不在が絵画に影響を与えているのがよくわかります。
母を題材にした作品、おどろおどろしい雰囲気をたたえた作品が数多く残されています。

スイスにはセガンティーニ美術館があり、スイスではかなりメジャーな存在のようです。

過去に大原美術館や静岡市美術館でセガンティーニ展を開催していたようですが、邦題が毎回違うのでご注意を。

2)オーギュスト・ロダン(1865~1925)
彫刻は今まで全く興味なかったのですが、この作品は全然違いました。作品の持っているパワーに圧倒されてしまいました。
著名人はオーラを感じるといいますが、まさにその感じです。
と、感動して調べてみるとなんとあの「考える人」の作者だったのですね。
まさか国民的認知度の高い作品の制作者だったとは。

考える人

考える人

ロダンは労働階級の家庭に生まれます。ロザンは遅咲きで生活の金銭を稼ぐのに精一杯でなかなか作品の制作ができませんでした。しかし、イタリア旅行でミケランジェロの彫刻を見てその情熱が再度燃え上がります。
その後制作した「青銅の時代」という作品が審査員の目に留まり、一気に知名度を上げます。晩年まで制作を続けていました。

殉教の女

殉教の女

静岡県立美術館にはオーギュスト・ロダン館があるので行ってみたいですね。
なぜ日本にそんなものがあるのだろうと思っていたら意外な点で日本と接点がありました。ロダンは第一次世界大戦前後までヨーロッパで活躍した女優、花子(本名は太田ひさ)をモデルにした彫刻を数多く制作しました。一人をモデルにした作品はこの方が最多です。東洋人の顔が珍しかったのかもしれませんね。

3)フェリックス・ヴァロットン
スイス出身のナビ派の画家。実験的要素の強い構図、展開をシュルレアリスムを予感させました。また、木版画はグラフィックアート界に新たな可能性を示しました。後世に影響を与えた人物です。

訪問

訪問

4)エドヴァルト・ムンク(1863~1944)
「叫び」で有名のムンク。幼少期から青年になった後も家族の死に直面しその不安、悲しみ、嘆きが作品にも表れています。自身もアルコール依存症を治すために精神病院に入院したことがあります。生まれ育ったノルウェーでは作品発表当初は酷評され続けます。しかし、30歳を過ぎてからベルリンやパリなどで評判を上げ、1908年にはノルウェー王国政府から聖オラヴ騎士章を授けられました。

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士はチューリヒ美術館の初代館長です。なかなかの男前ですね。

ちなみに他にはホドラー(同時期に兵庫県立美術館でホドラー展を開催しています。)、モネ、ドガ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルソー、ココシュカ、マティス、ブラック、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアン、ジャコメッティ、クレー、キリコ、ミロ、ダリ、マグリットなどが大御所たちが展示されています。

作品とは全然関係ないのですが、展示方法がいまいち・・・と感じました。作品はカテゴリーごとにセクションが分かれて展示されており、そのカテゴリーの解説もきちんとあるのですが、そのカテゴライズの仕方が気に入りません。
「ポスト印象派」「表現主義」「ムンク」「ココシュカ」など「○○派」と「人物名」を同カテゴリーでくくっているのです。
これでは各カテゴリーで完結してしまっていて、各セクションのつながりがなく非常に困惑してしまいます。

新印象派展を見に行ったときは、初めて新印象派を見る人にもわかりやすく時系列ごとに展示していた上に、印象派と新印象派の違いなど丁寧に解説していました。新印象派には期待せずに見に行ったのですが、すっかり好きになりました。

今回の展示も、個々で見ると非常に興味のそそられる作品ばかりです。しかし、ディレクションが上手くいっていないために、どの作品も印象が薄くなっているように感じます。作品自体が素晴らしいものばかりなので、何もしなくても集客できると絵の力に甘えているようにも取れました。

せっかく立地もいいですし、由緒ある建物で展示しているのでもうちょっと頑張ってほしいです。

◆参考◆
スイス政府観光局(チューリヒ美術館の紹介)
静岡県立美術館オーギュスト・ロダン館
フェリックス・ヴァロットン