山本二三展 リターンズ-天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女-

山本二三展 リターンズ
-天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫、時をかける少女-

会場:神戸ゆかりの美術館
会期:2016年7月16日~2016年9月4日

ルパン三世、天空の城ラピュタ、火垂るの墓、もののけ姫ー
日本人なら一度は見たことがあるこれらの作品を影から支えた美術家、山本二三(にぞう)の展覧会に行ってきました。

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山本二三氏(神戸ゆかりの美術館HPより)

この方、経歴が面白く、もともとは建築関係の勉強をされていました。ですが、どういうきっかけかはわからないのですが、未来少年コナンで美術監督に抜擢。若干24歳だったそうです。お若くて成功した方ですね。

普段、アニメーションとして動画で見ているので、なかなか一つのシーンを静止画としてみることができないので、非常に興味深かったです。
特に初期の天空の城ラピュタなどは今のようにパソコンで描くのではなく、手書きなので細部の美しさが光ります。遠くからみれば本当に写真のように見え、とくにもののけ姫の背景画はまるで実際にある風景の中にいるように錯覚しました。

会場内ではアニメーションの用語などをわかりやすく解説しています。普段何気なくアニメを見ているので、本当に「へえー!」と唸るものばかりでした。

所狭しと飾られた作品以外にも、天井からぶら下がる大きな布のようなものにプリントされた作品、受付前にある記念撮影用のセットなど狭い空間を生かして様々な手法で作品を見せていました。

色々な年代の方が来られていたので、じゃりん子チエや未来少年コナンなどの背景画もあったので、世代の方は懐かしくなるのでしょうね。
なんだかもう一度ジブリ作品を見たくなりました。

◆参考◆
神戸ゆかりの美術館

 

デトロイト美術館展 大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

 

大阪市立美術館 開館80周年記念
デトロイト美術館展
大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

会場:大阪市立美術館
会期:2016年7月9日~9月25日

アメリカ・デトロイトにある美術館の作品が大阪に巡回してきました。
デトロイトといえば、車産業が盛んな市であり、また、2013年に財政破綻したことで有名な市です。

大阪もデトロイト市と同様に、財政難で大阪現代美術館など文化施設を閉鎖しました。その中で大阪市立美術館はデトロイト市と同様に、財政難から逃れ、生き残った美術館でもあります。(スケールは違いますが・・・)それに引っ掛け、館内では各々の美術館の共通点をビデオにして放映していました。

本展は豊田市美術館にも巡回していますので、豊田市ではゼネラルモーターズとTOYOTAを引っ掛けて映像を作っているのでしょうね。

まず、デトロイト市は元々、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ、クライスター(通称:ビック3)の工場が立ち並び、産業で発達した都市でした。

しかし、1960年代のデトロイト暴動、1970年代の日本車の台頭により、デトロイト市の産業は廃退の一途を辿ります。経営悪化による従業員のリストラ、人口流出により不況に陥ります。デトロイト市は数々の打開策を打ち出しますが、それも叶わず、2009年のゼネラルモーターズ、クライスターの経営破綻が重なります。他業種の研究機関を置くなど、デトロイト市はなんとか頑張るのですが、ついに2013年に財政破綻に陥ります。

デトロイト美術館には数々の貴重な作品を保有しています。市はそれをオークションにかけ、売ることでお金を得ることを希望します。しかし、美術館が持つ美術品は市の税金で購入された財産です。手放してお金を得ることは簡単ですが、それは安易な考えです。(ヨーロッパでは財政難になると作品を得ってお金を得ることが一般的のようです。)市民や美術団体の反対により、作品は売却の手を免れ美術館も解体されずに守られることになりました。

大阪でいいますと、大阪現代美術館はなくなりましたが、美術品は各地の文化施設に保管され、江之子島文化芸術センターでは定期的に展示を行っています。大阪市民が猛反対すれば、現代美術館もなくならずに済んだのですかね。海外と日本の美術に対する温度差を感じます。

これらの話は館内で放映されているビデオや、原田マハなど著名人による音声ガイドでも聴けます。

音声ガイドは有料です。

私は海外では英語以外はキャプションが読めないので、音声ガイドを聞きますが(ほとんどの美術館は音声ガイドが無料です)、日本では音声ガイドは聞かない派なので(有料ですし(笑))、どういう内容かは不明です。

前置きはこのくらいで本展では4つのセクションに分けて作品を紹介します。

気になった作品を紹介していきます。

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エドガー・ドガ(1834-1917)「楽屋の踊り子たち」

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クロード・モネ(1840-1926)「グラジオラス」

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アメデオ・モディアーニ(1884-1920)「女の肖像」

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ラウル・デュフィ(1877-1953)「静物」

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ファン・グリス(1887-1927)「静物」
スペイン生まれ、パリで活躍したキュビズム画家です。モダンですね。

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エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー(1880-1938)「月下の冬景色」
今回のお気に入りです。
不眠症に悩まされながらアトリエの窓から目にする風景を描いた作品です。恐らく不眠症が原因でしょうが、作家には外の風景がこのように見えて、感激されたそうです。その感激された風景を絵に収めた作品です。
不思議な色合いの中に潜める冬景色の荘厳さと作家の静かな感動が一体となって、少しずつその感覚が迫ってくるようでした。

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フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)「自画像」
本展の一番の目玉です。

本展は週末を除き、写真撮影がOKでした。デトロイト美術館では写真撮影が許可されているため、日本でも同じように写真撮影を許可しているそうです。

この他にもオスカーココシュカの「エルサレムの眺め」が良かったのですが、SNS掲載がNGのため、展示されていたことだけお伝えします。

「○○美術館展」とつくものの多くは、狭い展示室に所狭しと展示されている場合が多いのですが、本展は52点展示で少し少なめなので、逆に見やすくて良かったです。

さすが写真大好きな日本人、皆様パシャパシャと作品をカメラに収めている姿が面白かったです。海外の有名な作品が来ている時の特徴だと思いますが、来場者は老若男女、子供まで数々の方が来場していました。量もそれほど多くないので、皆様退屈せず、しんどくもならず、ちょうどいい塩梅だと思います。入場料はちょっと高いな、と思いますが。○○美術館展とつく展示はどこも1,500~1,800円が多いですね。

監視員も厳しすぎるくらいきっちり監視されており、好印象でした。常設展が開催されていなかったので、同じチケットで常設展も見れるようにすればいいのにと思います。

子供向けの鑑賞ノートも置いてありました。お絵描きできるようになっていて、親子で奥の図書館で必死に書いています。

表紙には美術館でのマナーも書いてあります。

ところで予算のない昨今、どうやってこんな名画たちを持ってこれたのかなと不思議に思っていたら、外務省や大阪府、サンケイスポーツなど名だたる企業から後援、アメリカ合衆国大使館からの助成など、いろいろなところからご支援いただいていたからなのですね。
それでもギリギリの予算でされていたのかなと思うと、並ぶくらいお客さんが入ることを願うばかりです。

◆参考◆
デトロイト美術館展オフィシャルサイト
大阪市立美術館

チューリヒ美術館展 印象派からシュルレアリスムまで

「チューリヒ美術館展
印象派からシュルレアリスムまで」

会場:神戸市立博物館
会期:2015年1月31日~5月10日

そもそもチューリヒ美術館とはどこの美術館なのでしょうか。
正解はスイスのチューリヒにあります。
スイス芸術家の有名作品のほか、後期ゴシックやイタリア・バロックの名作、オランダ絵画、フランドル絵画から、フランス印象派絵画、表現主義絵画まで、各時代を代表するような巨匠の名画がそろっています。またそれと別に15世紀から現在までの素描や版画を集めた約8万点のグラフィック・コレクションや、写真やビデオ作品もあり、バラエティに富んだ作品を所蔵しています。

パンフレットに「巨匠いっき見!!」と書いているのですが、まさに有名芸術家を本展示で一通り見る事ができます。

作家数と作品数が多いので気に入ったものだけ紹介します。

1)ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858~1899)
幼いころ、母が病死し、父に捨てられ、異母姉の冷遇の元で暮らしますが、天然痘にかかるなど、幼いころから非常に不幸な生活をしています。彼はイタリア出身ですが、結婚後、スイスに移住します。
印象派の技法を取り入れつつ、彼独自の方法で雄大なアルプスを描くなどほかの印象派とは少し違うタッチで描きます。

淫蕩な女たちへの懲罰

淫蕩な女たちへの懲罰

虚栄

虚栄

幼少期の不幸の連続、母親の不在が絵画に影響を与えているのがよくわかります。
母を題材にした作品、おどろおどろしい雰囲気をたたえた作品が数多く残されています。

スイスにはセガンティーニ美術館があり、スイスではかなりメジャーな存在のようです。

過去に大原美術館や静岡市美術館でセガンティーニ展を開催していたようですが、邦題が毎回違うのでご注意を。

2)オーギュスト・ロダン(1865~1925)
彫刻は今まで全く興味なかったのですが、この作品は全然違いました。作品の持っているパワーに圧倒されてしまいました。
著名人はオーラを感じるといいますが、まさにその感じです。
と、感動して調べてみるとなんとあの「考える人」の作者だったのですね。
まさか国民的認知度の高い作品の制作者だったとは。

考える人

考える人

ロダンは労働階級の家庭に生まれます。ロザンは遅咲きで生活の金銭を稼ぐのに精一杯でなかなか作品の制作ができませんでした。しかし、イタリア旅行でミケランジェロの彫刻を見てその情熱が再度燃え上がります。
その後制作した「青銅の時代」という作品が審査員の目に留まり、一気に知名度を上げます。晩年まで制作を続けていました。

殉教の女

殉教の女

静岡県立美術館にはオーギュスト・ロダン館があるので行ってみたいですね。
なぜ日本にそんなものがあるのだろうと思っていたら意外な点で日本と接点がありました。ロダンは第一次世界大戦前後までヨーロッパで活躍した女優、花子(本名は太田ひさ)をモデルにした彫刻を数多く制作しました。一人をモデルにした作品はこの方が最多です。東洋人の顔が珍しかったのかもしれませんね。

3)フェリックス・ヴァロットン
スイス出身のナビ派の画家。実験的要素の強い構図、展開をシュルレアリスムを予感させました。また、木版画はグラフィックアート界に新たな可能性を示しました。後世に影響を与えた人物です。

訪問

訪問

4)エドヴァルト・ムンク(1863~1944)
「叫び」で有名のムンク。幼少期から青年になった後も家族の死に直面しその不安、悲しみ、嘆きが作品にも表れています。自身もアルコール依存症を治すために精神病院に入院したことがあります。生まれ育ったノルウェーでは作品発表当初は酷評され続けます。しかし、30歳を過ぎてからベルリンやパリなどで評判を上げ、1908年にはノルウェー王国政府から聖オラヴ騎士章を授けられました。

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像

ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士はチューリヒ美術館の初代館長です。なかなかの男前ですね。

ちなみに他にはホドラー(同時期に兵庫県立美術館でホドラー展を開催しています。)、モネ、ドガ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルソー、ココシュカ、マティス、ブラック、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアン、ジャコメッティ、クレー、キリコ、ミロ、ダリ、マグリットなどが大御所たちが展示されています。

作品とは全然関係ないのですが、展示方法がいまいち・・・と感じました。作品はカテゴリーごとにセクションが分かれて展示されており、そのカテゴリーの解説もきちんとあるのですが、そのカテゴライズの仕方が気に入りません。
「ポスト印象派」「表現主義」「ムンク」「ココシュカ」など「○○派」と「人物名」を同カテゴリーでくくっているのです。
これでは各カテゴリーで完結してしまっていて、各セクションのつながりがなく非常に困惑してしまいます。

新印象派展を見に行ったときは、初めて新印象派を見る人にもわかりやすく時系列ごとに展示していた上に、印象派と新印象派の違いなど丁寧に解説していました。新印象派には期待せずに見に行ったのですが、すっかり好きになりました。

今回の展示も、個々で見ると非常に興味のそそられる作品ばかりです。しかし、ディレクションが上手くいっていないために、どの作品も印象が薄くなっているように感じます。作品自体が素晴らしいものばかりなので、何もしなくても集客できると絵の力に甘えているようにも取れました。

せっかく立地もいいですし、由緒ある建物で展示しているのでもうちょっと頑張ってほしいです。

◆参考◆
スイス政府観光局(チューリヒ美術館の紹介)
静岡県立美術館オーギュスト・ロダン館
フェリックス・ヴァロットン

オルセー美術館展 その2(後半)

「オルセー美術館展
印象派の誕生ー描くことの自由ー」
会場:新国立美術館
会期:2014年7月9日~10月20日

前回の続きです。
私がオルセー美術館展で気に入った作品の紹介していました。

エドゥアール・マネ
「シャクヤクと剪定ばさみ」

エドゥアール・マネ_シャクヤクと剪定ばさみ

今度もマネの作品です。
マネは晩年、老齢のため室内で描ける静物画を多く残しています。
これは中年~老年の時に描かれた作品なので、老齢のため描いたのかはわからないのですが…
切立てのシャクヤクから今にも水が滴り落ちてきそうなほどの迫力です。
しかし、剪定ばさみとシャクヤクに奥行を感じないのは
その1で紹介した「笛を吹く少年」と共通しています。
そのアンバランスさに非常に心惹かれました。

ちなみにこの作品をモチーフにしたアクセサリーが本展では販売されていた模様。

シャルル=エミール・ジャック(1813-94)
「羊の群れのいる風景」

シャルル・ジャック_羊の群れのいる風景

もともとは銅版画家。ミレーやルソーの友人で当時のブルジョワ階級の人々の田舎への憧憬を背景として人気を得たよう。サロンに度々入賞しています。自然の中に羊を描いた作品を多く残しています。
とても心穏やかになる作品です。

エリー・ドローネー(1828-91)
「ローマのペスト」

エリー・ドローネー_ローマのペスト

悪魔を連れた天使。天使が悪魔に指示に、槍で扉を叩いた数だけ中の人が死ぬ。という作品。
当時、ローマで流行ったペストを絵で表すとまさにこのような状況だったのでしょうね。
キリスト教の国が、守護の象徴である天使をこのように表現するなんて衝撃的でした。
当時のおぞましい状況が伝わってきます。

エリー・ドローネーに関する情報があまり出てこなかったので、時間があれば調査しようと思います。

ウィリアム・ブグロー(1825-1905)
「ダンテとウェルギリウス」

ウィリアム・ブグロー「ダンテとウェルギリウス」

ウィリアム・ブグロー(ウィリアム・アドルフ・ブグロー)はアカデミズム絵画の代表画家。
当時のフランスの出世コースをそのまま歩いてきたエリートの王道といえる人物です。
しかし、20世紀に入ると印象派といったモダニズムの台頭とともに、美術史から忘れられた存在となります。20世紀末からアカデミズム絵画の再評価がなされ、再度注目され今日に至ります。
主に神話や天使、少女を描いた作品を多く残しています。

本作品はダンテの「神曲」を題材にした作品です。
地獄を見に来たダンテとウェルギリウスが遭遇した争う男性たちの様子を描いています。
今にも動き出しそうなまで生々しく描かれた男たちとその迫力。
争う男たちの後ろには倒れている男性、絡まりあう男女、争いを観察する筋肉質な悪魔。そしてダンテとウェルギリウス。
作品の内容は非常に気味が悪いのですが、すんなりと見れてしまう。そんな作品でした。

ブグローの作品をネットで見ていると、割と女性や天使の朗らかな作品を多く見受けられます。
この作品を描いた当時、ブグローはコンテストに入賞できずにいたようです。そんな自分の状況とも重ねているのでしょうか。

アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)
「花瓶のキク」

アンリ・ファンタン=ラトゥール_花瓶のキク

フランスのサロン画家であり、リトグラフ版画家。
主に、静物画、花、友人の画家や作家たちの集団肖像画、クラシックの大作曲家たちの作品を描いたリトグラフが代表作としてあります。
マネ、モネ、ルノアール、バジールといった印象派の人々と友人でマネにベルト・モリゾ(マネの弟と結婚した女流画家)を紹介した人物。ただし、印象派の表現には否定的である。

これ、画像でみるとただのキクに見えるんですけど・・・。実際見てみると全然違うんですね。
ただの花瓶とキクだけの絵なのですが、何か惹きつけるものがあるんです。
それは細かい筆使い、色使いのせいなのか構図のせいなのかわからないのですが、
本物のキクよりも魅力を感じるのです。
画像を見るたびにその思いが蘇るのですが、なんと表現したらいいのか。
静物画の特に花の作品ってあまりそそられなかったのですが、これは違います。
もう一度生でみたい作品です。

カロリュス=デュラン(1838-1917)
「手袋の婦人」

カロリュス=デュラン _手袋の婦人

主に肖像画のサロン画家。
この「手袋の婦人」は代表作です。
カロリュス=デュランはあまり情報がないので、どういう人物かわからなかったので
時間があれば追記しようと思います。ちなみにこの絵のモデルはデュランの奥さんだそうです。
非常に気品あふれるサロンらしい絵画で心惹かれました。

ちなみに本展ではこんな有名な作品も来ていました。

クロード・モネ「草上の昼食」

クロード・モネ「草上の昼食」

ギュスターヴ・カイユボット 「床に鉋をかける人々」

ギュスターヴ・カイユボット
「床に鉋をかける人々」

ジュール・ルフェーヴル 「真理」

ジュール・ルフェーヴル
「真理」

アレクサンドル・カバネル 「ヴィーナスの誕生」

アレクサンドル・カバネル
「ヴィーナスの誕生」

また、当日頂いたパンフレットに画家の相関図が載っていました。

写真

互いがどういう関係(友人、ライバルなど)なのか記載されていてわかりやすかったです。
これは冊子を写メったものなのでご参考までに。

◆参考◆
シャルル=エミール・ジャック
エリー・ドローネー(ウィキペディア)
ウィリアム・アドルフ・ブグロー(ウィキペディア)
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
アンリ・ファンタン=ラトゥール

オルセー美術館展 その1

「オルセー美術館展
印象派の誕生ー描くことの自由ー」
会場:新国立美術館
会期:2014年7月9日~10月20日
パリ・オルセー美術館の印象派絵画84点が来日。平日にもかかわらず、たくさんの人で館内はごった返していました。

オルセー美術館自体、あまり知らなかったので、調べてみました。
オルセー美術館
フランス、パリにある19世紀美術専門の美術館。主な収蔵作品のジャンルは
新古典派主義、アカデミズム、写実主義、印象派、ポスト印象派、象徴主義、世紀末技術、アール・ヌーボ、20世紀芸術萌芽の作品、ロダン以降の彫刻。
オルセー美術館はもともと「オルセー駅」の鉄道駅兼ホテルだったところを改修して美術館にしたそう。
なお、ほかの美術館と収集する年代を下記のように分けているそう。

1848年以前    →ルーブル美術館
1848年~1914年 →オルセー美術館
1914年以降      →ポンピドゥー・センター

もちろん例外はあるそうですが、知らなかったのでびっくりです。

今回は展示の作品数、作家が多いので気に入った作品を紹介していきます。

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

近代絵画の父、マネの作品。当時、風景や人物を忠実にそのまま描くことが良いとされてきた時代に満を持して現れた問題作です。
非常に平坦で奥行がなく、背景もぼかされていて絵画の伝統を無視しているなどと言われ、サロンの評判は非常に悪かった作品です。新しいことを始める第一人者はいつでも叩かれる運命だったのですね。

生で見るのは初めてだったのですが、すごい大きい作品だったのですね。
画像でこの絵を見ていた時は、のっぺりしているのはもちろん、小さくてこじんまりした絵だと思っていました。
しかし、実物は全然違います。マネ、なめていました。すみません。
背景をあえてぼかしているからこそ、少年の衣服やりりしい顔が目立ち、存在感を感じます。
しかし、少年を題材にしていることでどっしりした印象を与えず、軽やかに見ることができます。

この作品にはモデルがあるそうです。
それがスペインの画家ディエゴ・ベラスケスの作品「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

ディエゴ・ベラスケス「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

ディエゴ・ベラスケス「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

確かにとても似ています。現在、同様のことをしたら盗作だとか言われそうなほどにてます。
ディエゴ・ベラスケスの作品をより昇華した作品が笛を吹く少年だ、といった感じでしょうか。

本当なら絵画を独占してずーっと見ていたいところだったのですが、
人がたくさんいてゆっくり見れなかったので、またしっかり見て吟味したいです。

長くなりそうなので、その2に続きます。

◆参考◆
新国立美術館(オルセー館展)
笛を吹く少年の記事を書くにあたり参考にしたブログ

光と色のドラマ 新印象派

あべのハルカス美術館
光と色のドラマ
新印象派
モネ、スーラ、シニャックからマティスまで
会期:2014年10月10日(金)~2015年1月12日(月・祝)

ポール・シニャック

ポール・シニャック

スーラ

スーラ

初めて新印象派の絵画を見ました。
中学生の頃、美術の資料で見たときはただの綺麗な点描画程度にしか思っていなかったのですが、
それが覆された展示でした。
新印象派、恐れ入りました。

新印象派とは、
気に入った作品、
作品展の展示方法の順にご紹介していきます。

◆新印象派とは
印象派の動きを受けて、19世紀末(1880年代前半頃)から20世紀初頭にかけて存在した絵画の一傾向。 新印象主義とも呼ばれる。
ジョルジュ・スーラにより創始されたもので、科学性を重視し、印象派による光の捉え方(いわゆる色彩分割)を、
より理論化し、点描法によって、光をとらえることができる、と考えた。
具体的には、ゲーテやシュヴルールの色彩理論に大きく依拠しているといわれる(ゲーテの色彩論を参照)。
(ウィキペディアより)

今までの絵画と違って非常に計算されたクレーバーな絵なのですね。
だから点描にも関わらずこんな綺麗な作品なのですね。

◆気に入った作品

・ポール・シニャックの初期、中期の作品
ポール・シニャック
スーラに感銘を受け、新印象派として追随した画家。
スーラの死後(若くして死亡した)新印象派を牽引した。
初期は色彩理論に忠実に基づいて描いていたのですが、
後期になると、点描による色彩の混合よりここの色彩の特性とそれらの対比を強調することになる。
またより自由な感性で描かれた作風となる。

彼は旅行にたくさん行っており、仲間とヨットを運転して旅に出ていたそう。
ヨットに乗って旅をしている写真が会場には展示されていたのですが、
粋ですね。

スーラと比較してより鮮やかな色彩から躍動感を感じ、
スーラよりもシニャックのほうが好みでした。
アンリ=エドモン=クロス
明瞭な色彩とモザイクや織物を思わせる正確な点描を用いて新印象主義的な作品を制作、新印象主義の画家の中でも大きな成功を収める。
また象徴主義的表現への様式の変化など新しい点描の可能性を模索し、独自の様式を確立。
後のフォービスム(野獣派)の画家たち、特に20世紀最大の画家のひとりアンリ・マティスに多大な影響を与えた。

アンリ・エドモン・クロス

アンリ・エドモン・クロス

◆作品展の展示方法
初めに印象派時代の作品(初期のジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックの作品もあります)
→印象派から新印象派を提唱した時代の作品
→新印象派がオランダなど違う国へ波及していった時代の作品
→地中海をメインとした作品(すみません、美術館の意図と違うかもしれません)
→これまでは色彩理論に基づいた作品が主だったが、理論だけでなく作者の感情に合わせた色を使用していき、
今まで以上に自由な作品が増えた時代の作品
→フォーヴィズムの誕生へ繋がる時代の作品(初期のアンリ・マティスの作品もあります)

時代に沿って作品が展示されており、かつ注釈も数多く展示していたため、
予備知識なくともすっと理解して作品を見ることができました。
非常に見やすい展示だったと思います。

しかし、私はあまり現代美術と写真以外は鑑賞しないのですが、
久しぶりにいいものを見たと感じました。
特にシニャックの中期の作品は立ち止まって見入ってしまいました。
明るい色彩、木や空、海の流れをを感じ、それに合わせて描かれた点描、
点描にも関わらず、細部までシニャックが切り取った風景を感じることができる画才。
思わず圧倒されてしまいました。
非常にお腹いっぱいの状態です。

◆参考◆
ウィキペディア
あべのハルカス美術館
ポール・シニャック
アンリ=エドモン・クロッス