日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」 フジフィルム・フォトコレクションによる

「日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」
フジフィルム・フォトコレクションによる」

会期:2015年1月10日~2月11日
会場:伊丹市立美術館

フジフィルム主催のコレクション展を見てまいりました。
会場は非常に狭いのですが、101点の写真が所狭しと並んでいます。
同時開催で宮武外骨氏の展示も行っていました。

この中で良かった写真をピックアップしていきます。
1)鋤田正義(1938年~)
「母」

鋤田正義_母

鋤田氏は主にドキュメンタリー、広告、映画、音楽のジャンルで活躍する写真家。デビッド・ボウイや忌野清志郎などの写真も手掛けています。そういえば、2014年に大阪ビックステップで写真展をされていたのを思い出しました。

2)石元泰博(1921~2012)
「シカゴ 子供 〈シカゴ、シカゴ〉より

石元泰博_シカゴ 子供

サンフランシスコ出身で戦時中は日系人用の強制収容所に入れられたり、と苦労された方のようです。強制収容所にいる間に写真に興味をもったそう。石元氏の父の故郷が高知県ということで高知県立美術館の中に石元泰博フォトセンターがあります。

海外在住が長いせいか、写真も日本人写真家というよりは海外の方が撮ったような写真です。と思っていると、シカゴ、ニュー・バウハウスが彼の写真の原点になっていると聞いて納得しました。

この写真のストーリーを考えるとわくわくしますね。

3)白簱史朗(1933年~)
「冬の農 箱根姥子」

日本の山岳写真家。残念ながらネット上でこの作品が見つからなかったので、山岳写真を掲載しておきます。

4)沢渡朔(さわたりはじめ)(1940年~)
「〈NADIA〉より」

沢渡朔_NADIA

沢渡朔氏は中学生より写真を始め、高校生の頃には「サンケイカメラ」誌に入賞するなど、早くから頭角を現した写真家。有名な作品に10歳のイギリス少女モデルを起用し、不思議の国のアリスをモチーフにした作品「少女アリス」などがあります。
イタリア人モデルのナディアをテーマにした写真集の表紙を飾っている作品が展示されていました。

5)江成常夫(1936年~)
「スラムのアパートの三人家族 7ストリート、東Ⅲ番地 NewYork 〈ニューヨークの百家族〉より)

中国残留孤児や原爆など日本の負の面を題材にしている写真家。残念ながらネット上で写真は見つけられませんでした。

6)秋山亮二(1942~)
「〈津軽聊爾先生行状記〉より」

秋山亮二

朝日新聞写真部を経てフリーカメラマンに。すごくユーモラスな写真で思わずくすっと笑ってしまいました。手前にいらっしゃるご年配の男性の表情が子供のようにきらきらしていて良いんです。今回の展示で一番好きな写真です。

7)長倉洋海(1952~)
「一人、山上で本を読む戦士マスード アフガニスタン」

時事通信社写真部よりフリーカメラマンに。主に紛争地域や辺境に暮らす人々の写真を撮っています。
マスードとはアフマド・シャー・マスードのことでアフガニスタンの政治家です。マスードは大の読書家だったそうで、読書にまつわる伝説を数多く残しています。そんなマスードの読書風景を捉えた写真です。山の草原に足を投げ出して本を読んでいるマスード。あたりは山以外何もない大草原。何が起こっても気が付かないんではないかと思うほど集中して読んでいる様子が伝わってくる写真です。

8)中村征夫(なかむらいくお)(1945年~)
「海軍コマンドに憑かれた男たち」

海の報道写真家。残念ながらネット上で写真が見つからなかった上に氏のHPでは海の生物写真がメインで掲載されているため、全然雰囲気が違います。ネットで見る事ができるかわいらしい写真とは打って変わった作品です。わたしの説明力のなさでうまく伝えられないのですが・・・。

9)普後均(ふごひとし)(1947年~)
「「暗転」シリーズより」

細江英公を師事。フリーカメラマンとして世界各地を飛び回っていたようです。

10)ハービー・山口(1950年~)
「GARAXY,London」

バービー山口_Galaxy

大学卒業後、ロンドンに渡り写真家として活動。ロンドンでの写真が評価されます。日本に帰国後は、日本のアーティストを中心に撮影。

11)佐藤時啓(1957年~)
「光ー呼吸 #275 Koto-ku Aomi」

佐藤時啓_光ー呼吸シリーズ_#284 Dojunkai Apartment

彫刻家を経て写真家になるという面白い経歴。鏡と長時間露光を組み合わせて作った作品シリーズ「光ー呼吸」のひとつです。
画質の良い展示作品を見つけられなかったので、それと近い写真を掲載しています。(タイトル「#284 Dojunkai Apartment」)

◆参考◆
石元泰博フォトセンター
長倉洋海公式サイト
中村征夫公式サイト
ハービー・山口公式サイト
佐藤時啓 画像

第二回京都国際写真祭

「第二回京都国際写真祭」
会期:2014年4月19日~5月11日
会場:京都市内各地

昨年の話なのですが、今年も第三回目が開催されるようなので書いておこうと思います。
京都市内全15会場で行われる写真展を見て回るというプログラム。
「国際」写真祭ということで、国内外合わせて9か国の写真家の展示を見る事ができます。
見たい展示一か所だけ見てもよし、共通券を購入して全15会場を巡ってもよし。
私は時間の都合上、全部を見る事は出来ず、一部の展示だけ見に行きました。

会場は大学や神社、芸術センター、博物館や京都の由緒ある建物など、様々な場所で開催されています。
京都の由緒ある建物は普段一般公開していないので、両方見る事が出来て一石二鳥だと思います。

見たのは以下の3つです。

1)「Signature of Elegance リリアン・バスマンの仕事」
会場:龍谷大学 大宮学舎本館
入場料:無料

リリアン・バスマンその1

リリアン・バスマンその2

リリアン・バスマンその3

リリアン・バスマン
戦後の洗練された女性の内面を自由な感覚、手法で表したファッション写真家です。
もともとは雑誌「ハーパーズバザー」のディレクターでしたが、その後同誌の写真家として活躍します。
写真を黒く潰したり、白飛びさせたり、極端なまでにぼかしたりと写真界では基本的にタブー視されている手法をあえて取ることで
女性の美しさを引き出した写真家です。
非常に厳しく、こだわりの強い性格の方だったようで、雑誌の意向とご自身の写真の在り方とすれ違いが多々あり(これは芸術家なら誰もがぶち当たる壁だと思いますが)、ファッション写真から離れた時期もありました。しかし、1996年に再度注目されまたファッション写真業界に舞い戻ってきます。2012年にその生涯を閉じましたが、様々な人に影響を与えた女性です。

展示はおそらく原画ではなく、複製を飾っていたと思うのですが、これが無料でいいのか!?と驚くほど濃い内容でした。
写真家は女性でモデルも女性、私も女なので言葉にしにくいのですが、非常に共感しました。
彼女の独特の手法が妖艶さと芯の強い美しい女性を同じ写真の中に両立させていました。
ファッション写真というよりは芸術写真ですね。
女性は特に見に行くべきですね。

2)「Eternal Japan 1951-52 ワーナー・ビショフ/マグナムフォト」
会場:無名舎
入場料:500円

ワーナー・ビショフ

まず、マグナムフォトとは。
写真家ロバート・キャパが発案の会員が出資して運営する写真家集団。発案理由は写真家の意向に反して、勝手にトリミング(写真を拡大、縮小すること)されたり、キャプション(作品の説明書き)をつけられたりすることを防ぎ、写真家の自由と権利を守るために設立されました。現在もマグナムフォトはあり、50名を超える写真家がメンバーとして在籍しています。

ワーナー・ビショフ(1916~1954)
ファッション写真家ののち、ジャーナリスティックな写真家に移行します。
なお、1954年、南米ペルーのアンデス山脈で取材中ジープが谷底に転落し死亡。
本展はワーナー・ビショフが日本に訪れたときの写真です。
戦後の復興期の日本を撮っていて、懐かしい日本を疑似体験できるような写真です。
おまけ。無名舎について。
白生地問屋を商った京商家。1909(明治42)年建設で当時の生活工芸品や生活文化を垣間見ることができます。
こちらは料金を支払えば、通常でも見学することができます。
会場とワーナー・ビショフの写真が非常にマッチしていて面白かったです。

3)「眼から心への細糸 スタンリー・グリーン/NOOR」
会場:誉田屋源兵衛黒蔵
入場料:500円

スタンリー・グリーン

スタンリー・グリーン(1949~)
アメリカのフォトジャーナリスト。
チェチェン紛争(ロシア)、ルワンダのジェノサイド、ハリケーン・カトリーナ(アメリカ)など、様々な国の様々なジャンルを撮り続けています。報道写真家「NOOR 」のメンバー。
この方が3つの中で一番面白くて気持ち悪かったです。
1階は地球温暖化をテーマにした極寒の地(掲載している写真がそれに当たります。場所と民族名は忘れました。すみません。)に住む狩猟民族。服もすべて狩りで捕えた獲物の毛皮を着ています。その民族が直面する温暖化問題を追っています。
2階は世界各地の犯罪者を追った写真で映像も流れていたのですが、なかなか気持ち悪かったです。
気味が悪い、しかし私たちが知らなくてはいけない事実。でもやっぱりどこか他人事で目を逸らしたい。
そんな気持ち悪さでした。

おまけ。誉田屋源兵衛黒蔵について。
創業280年の帯屋さん。現在も革新的な帯を次々と発表される、まさに帯業界のパイオニア的存在。
帯の展示も一緒に見れたら最高でしたね。

ちなみに「KG+」といって一般公募の方も参加できるプログラムも同時開催されています。
こちらは無料のようです。
今年の展示も楽しみですね。

◆参考◆
京都国際写真祭
リリアン・バスマン(Numero TOKYO)
マグナムフォト
無名舎(京都観光Navi)
誉田屋源兵衛

PHOTO FAIR

PHOTO FAIR
会場:代官山ヒルサイドテラス
会期:2014年9月4日~9月7日
入場料:一般1500円学生1000円

フォトフェア

一般社団法人日本芸術写真協会が主催でギャラリーや写真関連イベントの方々が写真を展示、売買しているフォトフェア。
会期中には森山大道氏や細江英公氏といった写真家のトークショーや、ゼラチンシルバープリントといった銀塩写真を体験できるワークショップも同時開催されていました。

しかし、フォトフェアの存在に気が付いたのが開催日前日。トークショーは予約制だったのですが、聞きたいショーが満席だったため、諦めました。森山大道のトークショー、聞きたかったなあ。

フォトフェアって初めて行ったのですが、売買とギャラリーの宣伝がメインなのですね。てっきり写真展のようなものだと思っていました。ちょっぴり残念。

代官山ヒルサイドテラス_フォトフェア

タイトルが小さかったので、出品作品の写真家さんの名前が読めず、名前と写真を一致できなかったので、誰のどの写真がいいとかメモできませんでした。
というよりも、メモできるような雰囲気じゃなかったです(笑)。

◆参考◆
代官山ヒルサイドテラスPHOTO FAIR(公式サイト)

岡村昭彦

「生きること死ぬことのすべて」
岡村昭彦
会場:東京都立写真美術館
会期:2014年7月19日~9月23日

アイルランド共和国

アイルランド共和国

エチオピア

エチオピア

南ベトナム

南ベトナム

写真家紹介。
岡村昭彦(1929-1985)。PANA通信社の契約特派員としてベトナム戦争の最前線で取材を行います。
その様子が「LIFE」に掲載されたことで一躍有名に。「キャパを継ぐ男」といわれていました。
その後は環太平洋地域の取材、ケネディ大統領のルーツをたどり北アイルランド(岡村氏にとって第二のホーム)に移住、取材を行っていきます。また、故郷の静岡の取材も度々行っています。

また、ウィキペディア情報なので信憑性はありませんが、PANA通信社と契約を結ぶ前はかなりやんちゃだったようです。
学習院中等科に進みますが、教練の時に菊の紋章入りの木銃を叩き折って退学になるなどやんちゃぶりは中学時代から始まり、果ては東京医学専門学校退学後は(学費値上げの演説で退学処分を受ける)北海道へ渡り、無免許で開業し、医師法違反などで実刑判決を受けます。
北海道時代のことが彼を報道写真家の道へ押し上げたのでしょうか。とにかく波乱万丈の人生だったようです。

あまり好みではなかったのですが、とらえた捕虜や戦地での様子といった緊迫した様子の写真から兵士が戦地でダンスしている写真まで撮影しており、岡村氏と兵士の関係性や人柄が伺えます。

◆参考◆
東京都立写真美術館
岡村昭彦(ウィキペディア)

写真新世紀 東京展2014

写真新世紀 東京展2014
会場:東京都写真美術館
会期:2014年8月30日~9月21日

キャノン主催の新人写真家発掘プロジェクトである「写真新世紀」。
過去には、ヒロミックスや蜷川実花など有名な写真家が受賞されており、新人の登竜門の一つになっています。
その2013年受賞者の展示が偶然開催されていたので見てきました。
グランプリの鈴木育郎さんは受賞作品ではなく個展を、ほかの受賞者は受賞作品を展示していました。

中央の赤いジャケットを着用しているのが、鈴木育郎氏

中央の赤いジャケットを着用しているのが、鈴木育郎氏

夏に大阪のアートコートギャラリーで受賞作品を見ていたのですが、
グランプリの鈴木育郎さんの写真に非常に感動しました。その興奮冷めやらぬ間に個展を見ることができ、嬉しかったです。

鈴木育郎さん
1985年 静岡県浜松市生まれ。
24歳から本格的に写真を始めます。写真をするために鳶職に従事し、収入は写真を撮るために使っているそうです。
生きざまが格好いいです。その鳶仲間や仕事中に食べた食事などを撮った作品群が受賞作品でした。

今回は鳶の仲間だけでなく、自費出版した写真集や道で声を掛けた女性の写真やごはんの写真がメインでした。
女性の写真が多いので、アラーキーを少し思い出したのですが、
ごはんの写真がたくさんあるので、ちょっとかわいいなと思ってしまいました。
しかもごはんが全然おいしくなさそうなのです。
おいしそうに見える食べ物写真で溢れている世の中で、こんなにおいしくなさそうな写真も珍しいです。
しかし、そのごはんの写真はその代り、
鈴木育郎さんのごはんに対する執着といいますか、思いがダイレクトに伝わるのです。
すごくほっこりします。
鳶の仲間を撮っている写真も、相手との距離が非常に近くて、すごく自然なものが多いのも親近感を感じます。
写真に写っている人たちは私の友達であるかのような錯覚さえ起こし、嬉しく感じます。

写真新世紀2013カタログの表紙にもなった写真

写真新世紀2013カタログの表紙にもなった写真

鈴木育郎02

最近の写真は、コンセプチュアルなものが多くて、コンセプトというフィルターを掛けて写真を見てしまうことが多々ありました。
それはそれで悪くはないのですが、純粋に写真を見ることができなくなってしまい、少し嫌気がさしていました。
しかし、鈴木育郎さんの写真はそうではなく、素直に向き合える写真だと感じました。
最近はそういう写真が少ないので初めて見たときは非常に感動しました。

最近大阪・西成にいらっしゃったそうなので、ぜひ関西で個展を開いてほしいです。

写真集「生存」

写真集「生存」

◆参考◆
キャノン写真新世紀
鈴木育郎インタビュー(キャノン)

ROBERT DOISNEAU

「没後20年・ドアノーのパリ

ROBERT DOISNEAU展」
何必館・京都現代美術館
市役所前のキス

ROBERT DOISNEAU(ロベール・ドアノー)

1912年4月14日 – 1994年4月1日
フランスの写真家。
18歳のころより写真の道に入る。
主に「ヴォーグ」「ライフ」のカメラマンとして活動。
生涯パリの雑踏を歩き回り、パリの人々の写真を撮り続けました。
パリの人々にはドアノーは身近な人のようで、
パリジャン、パリジャンヌたちの自然な表情やキセキの瞬間を切り取った写真が数多くあります。
有名な作品として「市役所前のキス」があります。
アンリ・カルティエ=ブレッソンとも交流があり、同じくブレッソンと交流のあった日本の写真家、木村伊兵衛とも面識があります。
木村伊兵衛も同じく、東京に住む人々を撮っていたため、話が通ずるところが数多くあったでしょう。
彼の有名な言葉に
「写真は創るものではなく、探すものだ」
があります。

ドアノー

ドアノー2

彼の作品を見ていて思ったのですが、
まさに「写真は創るものではなく、探すものだ」
を体現した作品ばかりです。

子供達が無邪気に遊ぶ様子(どこの国でも子供達の無邪気さは同じなんだと感じました。)、
満面の笑みの恋人たち、思わずくすっと笑ってしまう茶目っ気のある写真など。
ドアノーの写真を見ると、パリはなんて平和で幸せに満ちた都市なんだと思います。

ドアノーの写真は心を豊かにしてくれ素直な気持ちにしてくれる、そう思います。

参考
何必館・京都現代美術館

世界報道写真展

「世界報道写真展」
ハービスHALL大阪

「世界報道写真展」とは
世界報道写真展は1956年オランダのアムステルダム発祥のドキュメンタリー、報道写真の展覧会。
今回は第57回目で132の国と地域、5,754人のプロの写真家参加の中から62作品が出展されていました。

「現代社会の問題」、「日常生活」、「自然」、「スポーツ・アクション」の部などカテゴリー別に競われ、
各カテゴリーで優秀な成績を収めた写真家の作品が展示しています。

報道写真ってお堅いとか変な偏見があったんですが、
今回写真を見て驚きました。

どうやってこの瞬間に巡り合えたのか不思議なくらい
敵地や爆撃地、緊迫した状況の中を
被写体に接近して撮影しており、
私も同じ現場にいたかのような錯覚に陥りました。
しかし、ただ物々しい雰囲気の中を撮影しているのではなく、
悲惨な光景を捉えた写真さえもまるで映画のセットのようで
非常に美しく見えました。

私が特に気に入った作品をいくつかご紹介します。

●スポットニュースの部
単写真2位
米国
タイラーヒックス
ボストンマラソンでの爆弾事件。

Image3

●現代社会の部
単写真3位
メキシコ
クリストファー・バネガス
犯罪組織による他の組織への報復として
橋の下に吊るしおろされた3人の遺体

それにしても、写真が原画じゃなかったのは非常に残念でした。
入場料も700円と安かったので仕方ないのでしょうが・・・。
欲を言えば生の写真が見たかったなあ。

大阪の展示は終わってしまったけど、
全国で時期をずらして開催しているようです。

参考文献
朝日新聞主催「世界報道写真展」

蜷川実花

蜷川実花

「TOKYO INNOCENCE」
阪急うめだ本店

写真家蜷川実花の写真集「TOKYO INNOCENCE」からの抜粋された写真の展覧会。
なんと観覧料無料だったんです。
そのかわり、作品の近くにソファがあり、多くの方が休憩されていて
非常に観にくかったのですが。
無料の割には展示も工夫されていて、文句は言えないですね。

写真集のタイトルからご察しの通り、日本のビジュアル系やコスプレといったサブカルチャーに
焦点を当てて撮影された作品。
蜷川実花にしては珍しく男性の写真も多々ありました。

私が観に行った日は運がよく、被写体の一人である島風榛名さん(しまかぜはるな)も来ていました。
彼女、自らアニメ顔の人型着ぐるみを来てパフォーマンスする方らしく
当日も着ぐるみで参戦している所を拝見しました。
ちなみに全身着ぐるみでパフォーマンスされている方を「ドーラ―」と呼ぶそうです。

作品自体は日本のサブカルチャーをさらに蜷川実花独特の「夢の世界」に連れて行っていて、
被写体自体が非常に活き活きとしていて驚きました。
毎回思うのですが、蜷川実花さんが撮るポートレートって被写体がセットの世界の主人公そのものになっていて、
自然にうっとりとした表情を捉えていて単純にすごいなと思います。

見せ方も面白くて約60点ある写真をパネルに3枚ずつくらい表裏に飾っていて
そのパネルが放射状に並べてあるんですね。
なので観客はぐるぐる回りながら見るようになっているんです。
発想が彼女らしいなと。
また会場選びも非常に適切だと感じました。
阪急百貨店は関西では若者向きの百貨店で、特に大阪本店は催事会場でファッションショーを開催したり
(私が観に行ったときも神戸コレクションのファッションショーが開催されていました。)
「女の子のため」の場所なんですね。
その中にこの写真がなじんでいたんです。
美術館でやったら面白みが半減するだろうなと感じました。
ディレクションもおそらく蜷川さんご本人がされていると思うのですが、
非常に彼女はご自身の写真について、また写真の読者について第三者目線で理解されていて
経営者としても残っていけるタイプだな
と写真展から感じました。
写真ひとつでご本人の人柄を感じれるなんて面白いですね。

参考
◆蜷川実花公式HP