デトロイト美術館展 大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

 

大阪市立美術館 開館80周年記念
デトロイト美術館展
大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち

会場:大阪市立美術館
会期:2016年7月9日~9月25日

アメリカ・デトロイトにある美術館の作品が大阪に巡回してきました。
デトロイトといえば、車産業が盛んな市であり、また、2013年に財政破綻したことで有名な市です。

大阪もデトロイト市と同様に、財政難で大阪現代美術館など文化施設を閉鎖しました。その中で大阪市立美術館はデトロイト市と同様に、財政難から逃れ、生き残った美術館でもあります。(スケールは違いますが・・・)それに引っ掛け、館内では各々の美術館の共通点をビデオにして放映していました。

本展は豊田市美術館にも巡回していますので、豊田市ではゼネラルモーターズとTOYOTAを引っ掛けて映像を作っているのでしょうね。

まず、デトロイト市は元々、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ、クライスター(通称:ビック3)の工場が立ち並び、産業で発達した都市でした。

しかし、1960年代のデトロイト暴動、1970年代の日本車の台頭により、デトロイト市の産業は廃退の一途を辿ります。経営悪化による従業員のリストラ、人口流出により不況に陥ります。デトロイト市は数々の打開策を打ち出しますが、それも叶わず、2009年のゼネラルモーターズ、クライスターの経営破綻が重なります。他業種の研究機関を置くなど、デトロイト市はなんとか頑張るのですが、ついに2013年に財政破綻に陥ります。

デトロイト美術館には数々の貴重な作品を保有しています。市はそれをオークションにかけ、売ることでお金を得ることを希望します。しかし、美術館が持つ美術品は市の税金で購入された財産です。手放してお金を得ることは簡単ですが、それは安易な考えです。(ヨーロッパでは財政難になると作品を得ってお金を得ることが一般的のようです。)市民や美術団体の反対により、作品は売却の手を免れ美術館も解体されずに守られることになりました。

大阪でいいますと、大阪現代美術館はなくなりましたが、美術品は各地の文化施設に保管され、江之子島文化芸術センターでは定期的に展示を行っています。大阪市民が猛反対すれば、現代美術館もなくならずに済んだのですかね。海外と日本の美術に対する温度差を感じます。

これらの話は館内で放映されているビデオや、原田マハなど著名人による音声ガイドでも聴けます。

音声ガイドは有料です。

私は海外では英語以外はキャプションが読めないので、音声ガイドを聞きますが(ほとんどの美術館は音声ガイドが無料です)、日本では音声ガイドは聞かない派なので(有料ですし(笑))、どういう内容かは不明です。

前置きはこのくらいで本展では4つのセクションに分けて作品を紹介します。

気になった作品を紹介していきます。

IMG_20160804_150713
エドガー・ドガ(1834-1917)「楽屋の踊り子たち」

IMG_20160804_150411
クロード・モネ(1840-1926)「グラジオラス」

IMG_20160804_153742
アメデオ・モディアーニ(1884-1920)「女の肖像」

IMG_20160804_154522
ラウル・デュフィ(1877-1953)「静物」

IMG_20160804_153352
ファン・グリス(1887-1927)「静物」
スペイン生まれ、パリで活躍したキュビズム画家です。モダンですね。

IMG_20160804_153202
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー(1880-1938)「月下の冬景色」
今回のお気に入りです。
不眠症に悩まされながらアトリエの窓から目にする風景を描いた作品です。恐らく不眠症が原因でしょうが、作家には外の風景がこのように見えて、感激されたそうです。その感激された風景を絵に収めた作品です。
不思議な色合いの中に潜める冬景色の荘厳さと作家の静かな感動が一体となって、少しずつその感覚が迫ってくるようでした。

IMG_20160804_151904
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)「自画像」
本展の一番の目玉です。

本展は週末を除き、写真撮影がOKでした。デトロイト美術館では写真撮影が許可されているため、日本でも同じように写真撮影を許可しているそうです。

この他にもオスカーココシュカの「エルサレムの眺め」が良かったのですが、SNS掲載がNGのため、展示されていたことだけお伝えします。

「○○美術館展」とつくものの多くは、狭い展示室に所狭しと展示されている場合が多いのですが、本展は52点展示で少し少なめなので、逆に見やすくて良かったです。

さすが写真大好きな日本人、皆様パシャパシャと作品をカメラに収めている姿が面白かったです。海外の有名な作品が来ている時の特徴だと思いますが、来場者は老若男女、子供まで数々の方が来場していました。量もそれほど多くないので、皆様退屈せず、しんどくもならず、ちょうどいい塩梅だと思います。入場料はちょっと高いな、と思いますが。○○美術館展とつく展示はどこも1,500~1,800円が多いですね。

監視員も厳しすぎるくらいきっちり監視されており、好印象でした。常設展が開催されていなかったので、同じチケットで常設展も見れるようにすればいいのにと思います。

子供向けの鑑賞ノートも置いてありました。お絵描きできるようになっていて、親子で奥の図書館で必死に書いています。

表紙には美術館でのマナーも書いてあります。

ところで予算のない昨今、どうやってこんな名画たちを持ってこれたのかなと不思議に思っていたら、外務省や大阪府、サンケイスポーツなど名だたる企業から後援、アメリカ合衆国大使館からの助成など、いろいろなところからご支援いただいていたからなのですね。
それでもギリギリの予算でされていたのかなと思うと、並ぶくらいお客さんが入ることを願うばかりです。

◆参考◆
デトロイト美術館展オフィシャルサイト
大阪市立美術館