アトラス

ゲルハルト・リヒターの本「アトラス」を読んで

ゲルハルト・リヒター_アトラス

ゲルハルト・リヒター(1932年2月9日-)
ドイツ最高峰の画家と言われている。
彼は初期の頃から写真の模写を行い、写真の一部、あるいは全体をぼかす「フォト・ペインティング」と
呼ばれる絵を描いている。
その絵を描くために、彼は膨大な写真コレクションを作っており、
それを「アトラス」と呼んでいる。

この本は主にフォト・ペインティングとアトラスに言及した内容です。
本を読んで氏について学んだことを書いていこうと思います。

ゲルハルト・リヒター

Betty

Betty

1)彼はなぜ写真を模写するのか。
彼はなぜ写真を模写するのか。
写真を模写するならば写真そのものを作品とすればいい。
アトラスを制作するにあたり、素材を彼自身が撮影することも多いので、
写真をそのまま作品にすればいいじゃないか。絵にこだわる理由とは何なのか。
このような疑問を持ちながら本書を読み進めていました。

写真が登場して今まで絵画が持っていた記録的要素は写真に取って代わられました。
写真はより真実で絵画は人工、作り物になってしまいました。
では絵画で真実を作り出すにはどうすればいいのか。
それは真実である写真(ゲルハルトリヒター氏「写真はもっとも完璧な絵画である。」)を
手本にして書き写すしかない。というわけだそうです。
また、絵画だとどうしても主観が入ってしまいます。
客観的に真実を写し取るために、絵の元となるアトラスもできる限り客観視できるように工夫していたようです。

残念ながら、そこまで彼が写真ではなく、絵画にこだわる理由は本書からはわかりませんでした。

1024Colours

1024Colours

2)彼にとって「アトラス」とは。
「リヒターの《アトラス》は、写真と、写真
にまつわる多種多様な実践を、イデオロギー的支配をおこなうシステ
ムとして、さらに正確に言えば、集団的な没価値状況、健忘症、抑
圧を社会に刻印する道具のひとつとしてとらえていたように思える。」
ベンジャミン・H.D.ブクロー 本書 P82

アトラスは新聞の切り抜きや素人写真の集合体ですが、
曖昧で抑圧された記憶に刻印をするように収集されています。

ちなみに「アトラス」は16世紀以降に地理的、天文学的な知識を集めて整理した本の形式を指すそうです。

Reading

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confrontation1

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candles

candles

Abstract Picture

Abstract Picture

他にもいろいろ書いてあったのですが、全て書くと読むのが飽きちゃうくらい長い記事になりそうなので
ここまでにしておきます。
しかし、非常に哲学的な内容で最後の方は理解できない部分がありました。
また、西洋の歴史に触れて書いている場所もあったので、世界史を勉強してから読み直すとより面白いと思います。
また数年後、リトライしたい本です。

Gregor SCHNEIDER(グレゴール・シュナイダー)のエッセイ集を読んで

グレゴール・シュナイダーのエッセイ集を知人に借りたので、その感想でもメモ。

グレゴール・シュナイダー
1969年ドイツ生まれ。16歳の時に自宅を改装した作品「Haus u r」を発表。現在も同作を制作し続けている。
部屋の空間や部屋そのものの在り方を利用して人間の死や感情を扱ったインスタレーションを展開しています。

エッセイ集「死は芸術作品か?」

エッセイ集「死は芸術作品か?」

エッセイ集では実際に実際に一般女性(ハンネローレ・ロイエン氏)に自宅に数年住んでもらって、その時の感じたことをグレゴール・シュナイダー氏本人がインタビューしたり、氏の作品についてキュレーターたちがインタビューした内容が記載されています。

ハンネローレ・ロイエン氏のインタビューがすごいのです。彼女はグレゴール氏の自宅に住み、少しずつ狂気の沙汰としか見えない改装、改築を目の当たりにし、精神が病んでいてヒステリック気味になっているのです。グレゴール氏に対しても、おそらく怒り、気味悪がっています。にもかかわらず、グレゴール氏がハンネローレ・ロイエン氏にインタビューをし続けるのです。彼は自分がやったことを客観的に見たいのでしょうね。自分がやったことを尋ねる際、まるで赤の他人の仕業のように質問し、返答に対して吟味しているようです。

死にに行く人を部屋に住ませて、その様子を展示するなどしているため、彼の活動は賛否両論だそうです。確かに、死と部屋の関係性を研究することは興味深いですが、倫理的にどうかとは思います。

他にも部屋を通して人々の精神を揺さぶる作品を数多く発表していて、部屋と人の心理の関係性について記述してあり、非常に面白かったです。

ちなみに彼の作品は解体して、持つ運び再構築することができるらしく、どこでも作品を再現可能だそうです。

しかし、あとから知ったのですが、横浜トリエンナーレに出展していたのですね。
しかも、気づかないような奥地にあったらしく、完全に見逃しました。
横浜トリエンナーレ観に行っていたので悔しいです。
観に行った方のブログを読んでみると、小部屋の中が泥沼になっているそうで、
泥沼の中に長靴で入れるとのこと(途中で参加者多数のため、立入禁止になったようですが。)。
部屋の静けさやおどろおどろしさにぞっとした方が多いようです。
泥沼に入れなくてもいいので見たかったです。
きちんとフロアマップみて作品見て回らないとだめですね。反省であります。

ジャーマン・アンクスト(横浜トリエンナーレ出展作品)

ジャーマン・アンクスト(横浜トリエンナーレ出展作品)

◆参考◆
ARTBOOK EUREKA(画像を拝借しています。)
横浜トリエンナーレについてのブログ