磯崎新 12×5=60

「磯崎新 12×5=60」
会場:ワタリウム美術館
会期:2014年8月31日~2015年1月12日

ワタリウム美術館初めて行ったのですが、
縦長のこじんまりとした美術館ですが、
会期中は何度も同じチケットで入場可能なパスポート制を導入するなど
頑張っているようです。
一階にミュージアムショップがあるのですが、
そこにある商品のラインナップも素敵。過去の展示で売り出したポストカードのアーカイブも販売しており、
大量の様々なアーティストのポストカードが並べていました。

磯崎新_1

鳥小屋(トリーハウス)

鳥小屋(トリーハウス)

磯崎新(いそざきあらた)
1931年7月23日-。
一級建築士。代表作として大分県立大分図書館、大阪万博のお祭り広場(丹下健三と共同)、ハラミュージアム・アーク、
ロサンゼルス現代美術館など。また1996、2000、2004年ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展の日本館コミッショナー。
本展時は磯崎新の「建築外的思考」に焦点を当てたもの。
なお、「建築外的思考」とは建築の外側の、美術、音楽、映像といった文化的表象全般の思考、
あるいは建築に対し、解体と再編を試みるアーキテクチャという文明論、思考的建築外のことを指します。

磯崎新_マリリンモンローのトレース

マリリンモンローの姿かたちを利用した曲線定規を使っていたそうです。
曲線定規にできるほど、マリリンモンローは芸術的な曲線美の体をしていたのですね。
その定規を使うのは少し気が引けますが。

磯崎新_ザ・パラディアム_1   磯崎新_ザ・パラディアム_2

本展時で面白かったのがアメリカにある「ザ・パラディアム」という古い映画館をディスコに改造した建物でした。
キース・へリング(アメリカの画家。ポップアート。)も参加しており、ぜひ中に入ってみたいと思わせる魅力にあふれたディスコのようです。

「間展」というパリで開かれた日本的空間を紹介する映像も流れており、日本人ならではの「間」感覚に思わず共感してしまい、ずっと眺めておりました。

磯崎新_サルバドール・ダリの家

ちなみに磯崎氏は初期に絵画サークルに所属しており、展示でもたくさんのスケッチが展示されていました。
鳥小屋(トリーハウス)が今回の目玉だったようですが、ほかの展示の方が面白かったです。

建築ってただ単に綺麗、すごいの感覚でしか見ていなかったのですが、本展と金沢21世紀美術館の展示を見て、建築が建物以外の要素にどう影響するか、という問題の存在に気づきました。建築を別の視点から見る事に気づかされた展示でした。

ひとつ展示を見に行って失敗したなあ。と思うことがありまして。
本展のタイトル「12×5=60」の意味が何を指すのかチェックしていなくて。
記事を書く段階になってどういう意味なんだろうと疑問に感じました。
一体どういう意味なんでしょう・・・。

◆参考◆
磯崎新(ウィキペディア)
ワタリウム美術館
ワタリウム美術館(次回展案内のPDF。ワタリウム美術館HPに掲載されている記事より、こちらの方が詳しいです。)

第二回京都国際写真祭

「第二回京都国際写真祭」
会期:2014年4月19日~5月11日
会場:京都市内各地

昨年の話なのですが、今年も第三回目が開催されるようなので書いておこうと思います。
京都市内全15会場で行われる写真展を見て回るというプログラム。
「国際」写真祭ということで、国内外合わせて9か国の写真家の展示を見る事ができます。
見たい展示一か所だけ見てもよし、共通券を購入して全15会場を巡ってもよし。
私は時間の都合上、全部を見る事は出来ず、一部の展示だけ見に行きました。

会場は大学や神社、芸術センター、博物館や京都の由緒ある建物など、様々な場所で開催されています。
京都の由緒ある建物は普段一般公開していないので、両方見る事が出来て一石二鳥だと思います。

見たのは以下の3つです。

1)「Signature of Elegance リリアン・バスマンの仕事」
会場:龍谷大学 大宮学舎本館
入場料:無料

リリアン・バスマンその1

リリアン・バスマンその2

リリアン・バスマンその3

リリアン・バスマン
戦後の洗練された女性の内面を自由な感覚、手法で表したファッション写真家です。
もともとは雑誌「ハーパーズバザー」のディレクターでしたが、その後同誌の写真家として活躍します。
写真を黒く潰したり、白飛びさせたり、極端なまでにぼかしたりと写真界では基本的にタブー視されている手法をあえて取ることで
女性の美しさを引き出した写真家です。
非常に厳しく、こだわりの強い性格の方だったようで、雑誌の意向とご自身の写真の在り方とすれ違いが多々あり(これは芸術家なら誰もがぶち当たる壁だと思いますが)、ファッション写真から離れた時期もありました。しかし、1996年に再度注目されまたファッション写真業界に舞い戻ってきます。2012年にその生涯を閉じましたが、様々な人に影響を与えた女性です。

展示はおそらく原画ではなく、複製を飾っていたと思うのですが、これが無料でいいのか!?と驚くほど濃い内容でした。
写真家は女性でモデルも女性、私も女なので言葉にしにくいのですが、非常に共感しました。
彼女の独特の手法が妖艶さと芯の強い美しい女性を同じ写真の中に両立させていました。
ファッション写真というよりは芸術写真ですね。
女性は特に見に行くべきですね。

2)「Eternal Japan 1951-52 ワーナー・ビショフ/マグナムフォト」
会場:無名舎
入場料:500円

ワーナー・ビショフ

まず、マグナムフォトとは。
写真家ロバート・キャパが発案の会員が出資して運営する写真家集団。発案理由は写真家の意向に反して、勝手にトリミング(写真を拡大、縮小すること)されたり、キャプション(作品の説明書き)をつけられたりすることを防ぎ、写真家の自由と権利を守るために設立されました。現在もマグナムフォトはあり、50名を超える写真家がメンバーとして在籍しています。

ワーナー・ビショフ(1916~1954)
ファッション写真家ののち、ジャーナリスティックな写真家に移行します。
なお、1954年、南米ペルーのアンデス山脈で取材中ジープが谷底に転落し死亡。
本展はワーナー・ビショフが日本に訪れたときの写真です。
戦後の復興期の日本を撮っていて、懐かしい日本を疑似体験できるような写真です。
おまけ。無名舎について。
白生地問屋を商った京商家。1909(明治42)年建設で当時の生活工芸品や生活文化を垣間見ることができます。
こちらは料金を支払えば、通常でも見学することができます。
会場とワーナー・ビショフの写真が非常にマッチしていて面白かったです。

3)「眼から心への細糸 スタンリー・グリーン/NOOR」
会場:誉田屋源兵衛黒蔵
入場料:500円

スタンリー・グリーン

スタンリー・グリーン(1949~)
アメリカのフォトジャーナリスト。
チェチェン紛争(ロシア)、ルワンダのジェノサイド、ハリケーン・カトリーナ(アメリカ)など、様々な国の様々なジャンルを撮り続けています。報道写真家「NOOR 」のメンバー。
この方が3つの中で一番面白くて気持ち悪かったです。
1階は地球温暖化をテーマにした極寒の地(掲載している写真がそれに当たります。場所と民族名は忘れました。すみません。)に住む狩猟民族。服もすべて狩りで捕えた獲物の毛皮を着ています。その民族が直面する温暖化問題を追っています。
2階は世界各地の犯罪者を追った写真で映像も流れていたのですが、なかなか気持ち悪かったです。
気味が悪い、しかし私たちが知らなくてはいけない事実。でもやっぱりどこか他人事で目を逸らしたい。
そんな気持ち悪さでした。

おまけ。誉田屋源兵衛黒蔵について。
創業280年の帯屋さん。現在も革新的な帯を次々と発表される、まさに帯業界のパイオニア的存在。
帯の展示も一緒に見れたら最高でしたね。

ちなみに「KG+」といって一般公募の方も参加できるプログラムも同時開催されています。
こちらは無料のようです。
今年の展示も楽しみですね。

◆参考◆
京都国際写真祭
リリアン・バスマン(Numero TOKYO)
マグナムフォト
無名舎(京都観光Navi)
誉田屋源兵衛

3.11以後の建築

「3.11以後の建築」

会場:金沢21世紀美術館
会期:2014年11月1日~2015年5月10日

津波で災害国日本の強固な建物はあっけなく破壊されました。
それはまるで今までの建築を自然が否定したかのようでした。

3.11後、建築と人とのつながり、建築を通しての復興支援、建築の役割とは何か、改めて考える機会ができたようです。

本展覧会では7つのセクションに分かれて、3.11後の建築を振り返っています。
建築とは何なのか。改めて考える建築家が多くいらっしゃったようです。

展示では実際の東日本大震災のプライバシーを配慮した仮設住宅やプロジェクトを通じて被災者の方を応援するなどの展示や、
東京R不動産の物件、エネルギーを使わないで温度調節する家などジャパンアーキテクトの内容とは打って変わったものでした。
ジャパンアーキテクト(2000年までの建築)は建物主体で、建物が地域にどう働くのか、建物に必要なエネルギーのことなどは全く考慮されていないように見受けられました。
しかし、3.11後は明らかにそこが変わったようです。

震災って思ってもみなかったところに作用するのですね。

話は変わりますが、昨日は阪神・淡路大震災から20年でした。
阪神・淡路大震災後は耐震とか建築の基本そのものが変わったと思うのですが、建築そのものの概念やあり方ってそこまで変わらなかったと思います。
一方、東日本大震災では概念が変わったように思います(建築だけでなく、文学なども影響を受けたそうです)。
この違いは津波や原発の被害があったからかはわかりませんが、
同じ災害でも他への影響度って全然違うのですね。

私も阪神・淡路大震災の被災経験があって、学生時代は毎年この日になると朝礼の時間に学校全体でお祈りしました。
今の小学校でも先生たちがこの時期になると震災の話をするそうですが、今の子供達はそれを知らない世代なのですね。
現に先日、神戸の一番被害が大きかった地域の区民ホールに行ったとき、小学生が描いた災害の絵が飾っていたのですが、
半分以上が東日本大震災やアメリカ同時多発テロ事件(9.11)の絵でした。
少し前ならほとんどが阪神大震災の絵だったのに、と複雑な気分になりました。

広島、長崎の原発のことを戦争を知らない世代に伝えるご年配の方の気持ちが少しわかりました。

東日本大震災を含め、この震災が次の災害に生かされるよう活動するのが残された者の使命なのでしょうね。

ジャパン・アーキテクツ 1945-2010

「ジャパン・アーキテクツ 1945-2010」

会場:金沢21世紀美術館
会期:2014年11月1日~2015年3月15日

ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館副館長のフレデリック・ミゲルー氏が監修・キュレーションした
戦後~21世紀に入るまでの日本の建築史を再構築する展示です。

年代ごとに色分けされた6つのセクションごとに建築の変化を見ていくことができます。

特に第二~第四セクションが近未来的で面白かったです。
会場内撮影禁止のため、写真がないのが残念です。

第二、第三セクションのご紹介です。
詳しいカタログがないので、建築名は覚えていないのですが、面白いと感じた試みをご紹介します。

1)埋め立て地を海岸沿いに作ると自然な海岸線が消えてしまうと考えて、
元の海岸の近くに複数の小さい人工島を作ることで海岸線を守ろうとした考えのもと作られた模型がありました。
確か制作年が公害が発生している時期と思います。
自然破壊などの意識の低い時代から未来のことを考えて建築しているなんて非常に先進的だったようです。

2)菊竹清訓 スカイハウス
家族の成長、世帯の変化に合わせて家を増改築できる新陳代謝する家。
氏の自宅です。
21世紀の今ならありそうですが、核家族が定着していた当時ではかなり斬新な発想だったのではないでしょうか。

他にもカプセルホテルや宇宙ステーション、葉の葉脈を思わせる建物も模型やドローイングが数々あり心躍りました。

次に第四セクションでは主に大阪万博時の建物を紹介していました。
私は生まれていないので、メディアと通してしか万博を見たことがありませんが、当時万博に行った方は面白かったのではないでしょうか。

各パビリオンごとに趣向を凝らしているのですが、特に興味深かったのはメイン広場です。
メイン広場の一日の在り方を開場後、昼、夜の3パターンに分けて研究されており、
その研究をもとに広場を設計しているのです。
実際意図したように機能したかはわかりませんが、その当時から人の動線を研究して設計していたことが伺えます。

第5セクションから安藤忠雄氏や伊藤豊雄氏などが表れ、既存建築からの脱却を試みていきます。

ちなみに私が気に入った建築家さんは
菊竹清訓氏(1928-2011)。
2000年にユーゴスラヴィア・ビエンナーレにて「今世紀を創った世界建築家100人」に選ばれています。
黒川紀章氏たちとともにメタボリズム(建築と都市の新陳代謝、循環更新システムによる建築の創造を図る)を提唱。
菊竹氏の建築事務所には伊東豊雄氏も務めいていました。
斬新すぎて定住はちょっと、と思う建築ばかりでしたが、一度泊まってみたいです。

菊竹清訓_ホテル・ソフィテル東京

日本の建築は破壊と構築の繰り返しで昔の良いものがなかなか残されていません。
災害が多いので、環境的にもヨーロッパと比べて残しにくいのはわかるのですが、
せめて建築という文化を儲からないからとかそういう理由で潰してほしくないなと思います。

きっと日本にはたくさんいい建築があるのに、自らその価値に気付かないでどんどん壊しているのでしょうね。
浮世絵もそうですけど、自国の素晴らしい文化に気付けず、海外で評価されて初めて価値を知るということが
日本は多すぎるように思います。もっと文化や芸術を大切にしてほしいです。

◆参考◆
菊竹清訓(ウィキペディア)

ARCHITECTURE FOR DOGS 犬のための建築

「ARCHITECTURE FOR DOGS
犬のための建築」

会場:金沢21世紀美術館
会期:2014年12月6日~2015年5月10日

MVRDV×ビーグル

MVRDV×ビーグル

ライザー+ウメモト×チワワ

ライザー+ウメモト×チワワ

金沢21世紀美術館の入場無料展示スペースで開催されていました。

犬の尺度で建築を捉えなおすというプロジェクト。
マイアミ、ロサンゼルス、TOTOギャラリー間(日本)、中国と巡回して金沢に降り立ちました。
デザイナー原研哉氏がディレクターです。
建築家さんのデザインした建築が展示されていることはもちろん、一般公募もしており、
ネットまたは会場にて設計図を応募することができます。

また、今回の建築の設計図はネットですべてダウンロード可能です。

ダウンロードはこちらから↓
http://architecturefordogs.com/ja/
入場無料は上に設計図のダウンロードができるなんてなかなか太っ腹な企画ですね。

今回一番気に入ったのはこれです。
妹島和世×ビションフリーゼ KAZUYO SEJIMA×BICHON FRISE

妹島和世×ビションフリーゼ

ワンちゃんと建築が一体となっているこの作品。
建築というよりは衣服みたいだなと思ったのですが。
建築に関しては完全に素人なので可愛さで選んでしまいましたが、
かわいいのももちろんですが、どの建築よりも一番犬が喜んでいるように見えたので選びました。

原デザイン研究事務所のこちらの作品もなかなかお茶目で好きでした。

原デザイン研究所×ジャパニーズテリア

建築家のご紹介です。
原研哉

原研哉
1958年生まれ。
無印良品のアドバイザリーボードメンバー、長野オリンピック開閉会式プログラム、愛知万博公式ポスターなど、数々のアートディレクションを手掛けています。
日本デザインセンター代表取締役社長、武蔵野美術大学教授。、日本デザインコミッティー理事長、日本グラフィックデザイナー協会副会長。

妹島和世
金沢21世紀美術館、海の駅なおしま、犬島「家プロジェクト」で有名ですね。
1956年生まれ。
日本建築学会賞、毎日芸術賞、ベネチア・ビエンナーレ建築展・金獅子賞(最高賞)など、受賞は多数。
だいぶ昔に直島についてのトークショーを聞きに行ったことがあります。
内容は全く覚えていないのですが、建築はただ人間を外から守るだけではなく、
建物ひとつで町が変わったりと地域との関わりが非常に強いものなんだと思った覚えがあります。
妹島氏の建築一覧がこの方のブログで見れます。
http://uratti.web.fc2.com/architecture/sejima/sejima.htm

◆参考◆
原研哉氏日本デザインセンター原デザイン研究室
妹島和世×茂木健一郎インタビュー

オルセー美術館展 その2(後半)

「オルセー美術館展
印象派の誕生ー描くことの自由ー」
会場:新国立美術館
会期:2014年7月9日~10月20日

前回の続きです。
私がオルセー美術館展で気に入った作品の紹介していました。

エドゥアール・マネ
「シャクヤクと剪定ばさみ」

エドゥアール・マネ_シャクヤクと剪定ばさみ

今度もマネの作品です。
マネは晩年、老齢のため室内で描ける静物画を多く残しています。
これは中年~老年の時に描かれた作品なので、老齢のため描いたのかはわからないのですが…
切立てのシャクヤクから今にも水が滴り落ちてきそうなほどの迫力です。
しかし、剪定ばさみとシャクヤクに奥行を感じないのは
その1で紹介した「笛を吹く少年」と共通しています。
そのアンバランスさに非常に心惹かれました。

ちなみにこの作品をモチーフにしたアクセサリーが本展では販売されていた模様。

シャルル=エミール・ジャック(1813-94)
「羊の群れのいる風景」

シャルル・ジャック_羊の群れのいる風景

もともとは銅版画家。ミレーやルソーの友人で当時のブルジョワ階級の人々の田舎への憧憬を背景として人気を得たよう。サロンに度々入賞しています。自然の中に羊を描いた作品を多く残しています。
とても心穏やかになる作品です。

エリー・ドローネー(1828-91)
「ローマのペスト」

エリー・ドローネー_ローマのペスト

悪魔を連れた天使。天使が悪魔に指示に、槍で扉を叩いた数だけ中の人が死ぬ。という作品。
当時、ローマで流行ったペストを絵で表すとまさにこのような状況だったのでしょうね。
キリスト教の国が、守護の象徴である天使をこのように表現するなんて衝撃的でした。
当時のおぞましい状況が伝わってきます。

エリー・ドローネーに関する情報があまり出てこなかったので、時間があれば調査しようと思います。

ウィリアム・ブグロー(1825-1905)
「ダンテとウェルギリウス」

ウィリアム・ブグロー「ダンテとウェルギリウス」

ウィリアム・ブグロー(ウィリアム・アドルフ・ブグロー)はアカデミズム絵画の代表画家。
当時のフランスの出世コースをそのまま歩いてきたエリートの王道といえる人物です。
しかし、20世紀に入ると印象派といったモダニズムの台頭とともに、美術史から忘れられた存在となります。20世紀末からアカデミズム絵画の再評価がなされ、再度注目され今日に至ります。
主に神話や天使、少女を描いた作品を多く残しています。

本作品はダンテの「神曲」を題材にした作品です。
地獄を見に来たダンテとウェルギリウスが遭遇した争う男性たちの様子を描いています。
今にも動き出しそうなまで生々しく描かれた男たちとその迫力。
争う男たちの後ろには倒れている男性、絡まりあう男女、争いを観察する筋肉質な悪魔。そしてダンテとウェルギリウス。
作品の内容は非常に気味が悪いのですが、すんなりと見れてしまう。そんな作品でした。

ブグローの作品をネットで見ていると、割と女性や天使の朗らかな作品を多く見受けられます。
この作品を描いた当時、ブグローはコンテストに入賞できずにいたようです。そんな自分の状況とも重ねているのでしょうか。

アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)
「花瓶のキク」

アンリ・ファンタン=ラトゥール_花瓶のキク

フランスのサロン画家であり、リトグラフ版画家。
主に、静物画、花、友人の画家や作家たちの集団肖像画、クラシックの大作曲家たちの作品を描いたリトグラフが代表作としてあります。
マネ、モネ、ルノアール、バジールといった印象派の人々と友人でマネにベルト・モリゾ(マネの弟と結婚した女流画家)を紹介した人物。ただし、印象派の表現には否定的である。

これ、画像でみるとただのキクに見えるんですけど・・・。実際見てみると全然違うんですね。
ただの花瓶とキクだけの絵なのですが、何か惹きつけるものがあるんです。
それは細かい筆使い、色使いのせいなのか構図のせいなのかわからないのですが、
本物のキクよりも魅力を感じるのです。
画像を見るたびにその思いが蘇るのですが、なんと表現したらいいのか。
静物画の特に花の作品ってあまりそそられなかったのですが、これは違います。
もう一度生でみたい作品です。

カロリュス=デュラン(1838-1917)
「手袋の婦人」

カロリュス=デュラン _手袋の婦人

主に肖像画のサロン画家。
この「手袋の婦人」は代表作です。
カロリュス=デュランはあまり情報がないので、どういう人物かわからなかったので
時間があれば追記しようと思います。ちなみにこの絵のモデルはデュランの奥さんだそうです。
非常に気品あふれるサロンらしい絵画で心惹かれました。

ちなみに本展ではこんな有名な作品も来ていました。

クロード・モネ「草上の昼食」

クロード・モネ「草上の昼食」

ギュスターヴ・カイユボット 「床に鉋をかける人々」

ギュスターヴ・カイユボット
「床に鉋をかける人々」

ジュール・ルフェーヴル 「真理」

ジュール・ルフェーヴル
「真理」

アレクサンドル・カバネル 「ヴィーナスの誕生」

アレクサンドル・カバネル
「ヴィーナスの誕生」

また、当日頂いたパンフレットに画家の相関図が載っていました。

写真

互いがどういう関係(友人、ライバルなど)なのか記載されていてわかりやすかったです。
これは冊子を写メったものなのでご参考までに。

◆参考◆
シャルル=エミール・ジャック
エリー・ドローネー(ウィキペディア)
ウィリアム・アドルフ・ブグロー(ウィキペディア)
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
アンリ・ファンタン=ラトゥール

オルセー美術館展 その1

「オルセー美術館展
印象派の誕生ー描くことの自由ー」
会場:新国立美術館
会期:2014年7月9日~10月20日
パリ・オルセー美術館の印象派絵画84点が来日。平日にもかかわらず、たくさんの人で館内はごった返していました。

オルセー美術館自体、あまり知らなかったので、調べてみました。
オルセー美術館
フランス、パリにある19世紀美術専門の美術館。主な収蔵作品のジャンルは
新古典派主義、アカデミズム、写実主義、印象派、ポスト印象派、象徴主義、世紀末技術、アール・ヌーボ、20世紀芸術萌芽の作品、ロダン以降の彫刻。
オルセー美術館はもともと「オルセー駅」の鉄道駅兼ホテルだったところを改修して美術館にしたそう。
なお、ほかの美術館と収集する年代を下記のように分けているそう。

1848年以前    →ルーブル美術館
1848年~1914年 →オルセー美術館
1914年以降      →ポンピドゥー・センター

もちろん例外はあるそうですが、知らなかったのでびっくりです。

今回は展示の作品数、作家が多いので気に入った作品を紹介していきます。

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

近代絵画の父、マネの作品。当時、風景や人物を忠実にそのまま描くことが良いとされてきた時代に満を持して現れた問題作です。
非常に平坦で奥行がなく、背景もぼかされていて絵画の伝統を無視しているなどと言われ、サロンの評判は非常に悪かった作品です。新しいことを始める第一人者はいつでも叩かれる運命だったのですね。

生で見るのは初めてだったのですが、すごい大きい作品だったのですね。
画像でこの絵を見ていた時は、のっぺりしているのはもちろん、小さくてこじんまりした絵だと思っていました。
しかし、実物は全然違います。マネ、なめていました。すみません。
背景をあえてぼかしているからこそ、少年の衣服やりりしい顔が目立ち、存在感を感じます。
しかし、少年を題材にしていることでどっしりした印象を与えず、軽やかに見ることができます。

この作品にはモデルがあるそうです。
それがスペインの画家ディエゴ・ベラスケスの作品「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

ディエゴ・ベラスケス「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

ディエゴ・ベラスケス「道化師パブロ・デ・バリャドリード」

確かにとても似ています。現在、同様のことをしたら盗作だとか言われそうなほどにてます。
ディエゴ・ベラスケスの作品をより昇華した作品が笛を吹く少年だ、といった感じでしょうか。

本当なら絵画を独占してずーっと見ていたいところだったのですが、
人がたくさんいてゆっくり見れなかったので、またしっかり見て吟味したいです。

長くなりそうなので、その2に続きます。

◆参考◆
新国立美術館(オルセー館展)
笛を吹く少年の記事を書くにあたり参考にしたブログ

PHOTO FAIR

PHOTO FAIR
会場:代官山ヒルサイドテラス
会期:2014年9月4日~9月7日
入場料:一般1500円学生1000円

フォトフェア

一般社団法人日本芸術写真協会が主催でギャラリーや写真関連イベントの方々が写真を展示、売買しているフォトフェア。
会期中には森山大道氏や細江英公氏といった写真家のトークショーや、ゼラチンシルバープリントといった銀塩写真を体験できるワークショップも同時開催されていました。

しかし、フォトフェアの存在に気が付いたのが開催日前日。トークショーは予約制だったのですが、聞きたいショーが満席だったため、諦めました。森山大道のトークショー、聞きたかったなあ。

フォトフェアって初めて行ったのですが、売買とギャラリーの宣伝がメインなのですね。てっきり写真展のようなものだと思っていました。ちょっぴり残念。

代官山ヒルサイドテラス_フォトフェア

タイトルが小さかったので、出品作品の写真家さんの名前が読めず、名前と写真を一致できなかったので、誰のどの写真がいいとかメモできませんでした。
というよりも、メモできるような雰囲気じゃなかったです(笑)。

◆参考◆
代官山ヒルサイドテラスPHOTO FAIR(公式サイト)

Gregor SCHNEIDER(グレゴール・シュナイダー)のエッセイ集を読んで

グレゴール・シュナイダーのエッセイ集を知人に借りたので、その感想でもメモ。

グレゴール・シュナイダー
1969年ドイツ生まれ。16歳の時に自宅を改装した作品「Haus u r」を発表。現在も同作を制作し続けている。
部屋の空間や部屋そのものの在り方を利用して人間の死や感情を扱ったインスタレーションを展開しています。

エッセイ集「死は芸術作品か?」

エッセイ集「死は芸術作品か?」

エッセイ集では実際に実際に一般女性(ハンネローレ・ロイエン氏)に自宅に数年住んでもらって、その時の感じたことをグレゴール・シュナイダー氏本人がインタビューしたり、氏の作品についてキュレーターたちがインタビューした内容が記載されています。

ハンネローレ・ロイエン氏のインタビューがすごいのです。彼女はグレゴール氏の自宅に住み、少しずつ狂気の沙汰としか見えない改装、改築を目の当たりにし、精神が病んでいてヒステリック気味になっているのです。グレゴール氏に対しても、おそらく怒り、気味悪がっています。にもかかわらず、グレゴール氏がハンネローレ・ロイエン氏にインタビューをし続けるのです。彼は自分がやったことを客観的に見たいのでしょうね。自分がやったことを尋ねる際、まるで赤の他人の仕業のように質問し、返答に対して吟味しているようです。

死にに行く人を部屋に住ませて、その様子を展示するなどしているため、彼の活動は賛否両論だそうです。確かに、死と部屋の関係性を研究することは興味深いですが、倫理的にどうかとは思います。

他にも部屋を通して人々の精神を揺さぶる作品を数多く発表していて、部屋と人の心理の関係性について記述してあり、非常に面白かったです。

ちなみに彼の作品は解体して、持つ運び再構築することができるらしく、どこでも作品を再現可能だそうです。

しかし、あとから知ったのですが、横浜トリエンナーレに出展していたのですね。
しかも、気づかないような奥地にあったらしく、完全に見逃しました。
横浜トリエンナーレ観に行っていたので悔しいです。
観に行った方のブログを読んでみると、小部屋の中が泥沼になっているそうで、
泥沼の中に長靴で入れるとのこと(途中で参加者多数のため、立入禁止になったようですが。)。
部屋の静けさやおどろおどろしさにぞっとした方が多いようです。
泥沼に入れなくてもいいので見たかったです。
きちんとフロアマップみて作品見て回らないとだめですね。反省であります。

ジャーマン・アンクスト(横浜トリエンナーレ出展作品)

ジャーマン・アンクスト(横浜トリエンナーレ出展作品)

◆参考◆
ARTBOOK EUREKA(画像を拝借しています。)
横浜トリエンナーレについてのブログ

TYINテーネステュエ・アーキテクツ展

「HUMAN-ARCHITECTURE
TYINテーネステュエ・アーキテクツ展」
会場:TOTOギャラリー間
会期:2014年7月10日~9月20日

会場の様子

会場の様子

TYIN_本棚

建築とデザインが専門のTOTOが運営するギャラリー、「ギャラリー間」に初めて行ってきました。
だいぶ前ですが・・・(笑)
ここ、なんと入場無料なんですね。2フロアの狭いギャラリーなんですけど、内容が充実しているうえに
さすが建築専門なだけあって、建物そのものの構造も凝っています。
また、2階には建築、デザインの専門書を取り扱う本屋もあります。台湾に行ったときに本屋で日本の旅行ガイドブックを見たのですが、そこにもTOTOの本屋が掲載されていたので、海外でも有名なようです。
現に私が、2014年秋に本屋を見ていると、中国人の観光客が団体で来て、大量に本を買っているのを見ました。

さて本題ですが、今回はノルウェーを拠点に活動する若手建築家ユニット
「TYINテーネステュエ・アーキテクツ」の展示です。

TYINテーネステュエ・アーキテクツとは?
アンドレア・G・ゲールセン(1981年-)とヤシャー・ハンスタッド(1982年-)によるノルウェーを拠点として活動する建築ユニット。Global Award for Sustainable Architecture 金賞(2012年)をはじめ、世界各国の数々の建築賞を受賞している。
タイの紛争地域で現地の人たちと協力しながら、現地調達した材料と工具を使用して孤児院を作るなど、地域に根差し、社会持続性を持った建築を作り上げています。

TYIN本人

展示では、彼らが地域に根差して作り上げた建築の数々を、建築の模型、携わった人々、使用した工具、現地の人々の関わり合い・・・多面的に紹介しています。

こちらの勝手な判断で地域の人の意見も聞かずに孤児院を作って、現地の人たちに押し付けるのではなく、現地の人たちと一緒に作業することで、彼らのライクワークを取り入れた本当に必要な、無駄のない建築を作っているんだと、感じました。

バタフライハウス

バタフライハウス

バタフライハウス

バタフライハウス

セイフ・ヘイブン孤児院の浴場

セイフ・ヘイブン孤児院の浴場

セイフ・ヘイブン孤児院の模型

セイフ・ヘイブン孤児院の模型

住民のライフワークを取り入れた建築ってなかなか難しいと思います。その中で、これは良いなと思った建築がこれです。

Barnetraakk

Barnetraakk

この建築、ノルウェーのGranの小学校の通学路に建てられた小さな建物です。子供達は通学時、友人をここで待ち、待っている間に建物の中で遊ぶこともできます。確か、建物同士をくっつけたり、話したりすることもできたと思います。
子供達の創造性をくすぐる建築だと思います。これなら毎日の登下校も楽しくなるんじゃないのかな。

何はともあれ、無料でこの展示はなかなかの見応えだと思います。

◆参考◆
TYINテーネステュエ・アーキテクツ(公式サイト)
TOTOギャラリー間
TYINテーネステュエ・アーキテクツ(YOUTUBE)