横浜トリエンナーレ2014その2

横浜トリエンナーレ2014その2
会場:2014年8月1日~11月3日
会期:横浜美術館、新港ピア

今回は横浜美術館しか観に行っていないので、
美術館内の各セクションで良かった作品をピックアップして取り上げていこうと思います。

第1話:沈黙とささやきに耳をかたむける横浜美術館
「黙っているものは情報化されずに忘れられていく。ささやきも耳をそばだてないと聞こえてこない。 しかし「沈黙」や「ささやき」には、饒舌や演説を凌駕する重みや強度が隠されている。 その重みや強度が芸術になる。」
アグネス・マーティン(Agnes MARTIN)
1912-2004。カナダ出身。
昔、国立国際美術館で見て覚えていたので取り上げました。
ミニマリズム、抽象表現アーティスト。
空間や対象、線などを絵画としての形態をなくすことで、ふわふわとした掴みどころのない絵。
形態のない作品を作ることで主題から絵画を解放そうとしました。

アグネス・マーティン_無題#10

ちなみにこの方、女性です。現代に近づくと女性アーティストが数多く出現するのはうれしいです。

マルセル・ブロータース(Marcel BROODTHAERS)
1924-1976。ベルギー出身。
とても不思議で数ある作品の中でも印象に残ったものの一つ。
詩人、映像作家。初期は短編映像を作るが、途中からコラージュやインスタレーションの制作など
手広く行っています。

ウィキペディアに掲載されていた彼の言葉が衝撃的だったので転載します。
これは彼の初めて展覧会で作られたカタログの序文です。

「私は、何かが売れて、人生に成功できないかどうか、散々思案した。
長い間、私は何もうまくいかなかった。
私は40歳になり、とうとう適当に何かをでっち上げるアイデアが浮かび、すぐにとりかかった。
3ヵ月後、私は出来上がったものをサン・ローラン画廊のオーナー、フィリップ・エドゥアール・トゥサンに
見せた。
彼は『しかし、こいつは芸術だよ。』、そして、『それなら、うちでこいつを全部展示しよう。』と言った。
『いいとも。』私は返答した。
もし、何かが売れればギャラリー側は30%を受け取る。いくつかのギャラリーの条件は普通75%のようだ。
こいつは何なのか?それは実際、作品だった。」

彼は1968年に現代鷲美術館というインスタレーション作品を制作します。そこでは美術館を破産させるために美術館そのものを「売却」しようとしたり、金塊を資金調達のために美術館に売りました。その金塊はアートとしてより金の市場価値を見越して値段がつけられたようです。

アートとは何なのでしょう。結局アートは商業ベースに乗らざるを得ない運命なのでしょうか・・・。
横浜トリエンナーレでは
「猫のインタビュー」
という作品を展示していました。
これはマルセル氏が愛猫に近年の絵画や美術についてインタビューする様子を録音した作品。
氏が真剣に猫に対して近年のアートについて質問しているのですが、
インタビューのお相手は何せ正真正銘の猫なので、返答はもちろん「ニャー」だけです。
「ニャー」と一口にいってもいろいろな「ニャー」がありまして、
「ニャーニャー」「ニャーニャーニャーニャニャー」などバリエーション豊富で
猫の鳴き声だけでこんなにも存在するのか、奥深いなあと感嘆します。

というのは冗談で、まさにウィキペディアから転載してたカタログの序文を形にした、現代アートを揶揄する作品だなと感じました
ミニマリズムとは?
哲学要素の強いアートの流れに逆らい、名前の通り最小限の芸術様式を用いたアート。本物の空間と素材に基づく。

◆参考◆
名古屋市立美術館(アグネス・マーティンに関する資料。PDF)
アート用語(ミニマリズムとは)